令和6年度 春期 ITストラテジスト試験 午後II 問1 DX実現に向けた新技術採用(論文)
ストラテジシステム戦略・企画
この問題は2024(R6)春 ITストラテジスト 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
DX実現のために新たな情報技術を採用する際の、技術評価と経営層への説明を論じるITストラテジスト午後Ⅱの問題です。模範解答は公表されないため、設問要求と講評から論述の骨格を組みます。講評では、技術検証の手順や結果だけで終わり、経営や事業の観点からの評価に至らない答案が繰り返し指摘されました。PoCの結果を投資判断の材料へ翻訳し、経営層が認識すべきリスクを明示する構成が評価の分水嶺です。
この記事で押さえる論点
- DXの狙いと新技術の必要性を事業特性から説明する
- 机上確認と技術検証の内容・結果を具体的に論述する
- 経営層に説明したリスクと対策を経営の言葉で表現する
出題情報
- 出題
- 2024(R6)春 ITストラテジスト 午後II 問1
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
企業は,DXの実現に向けて,情報技術を活用した新サービスの開発や既存事業の改革などの施策を企画する際,従来の情報技術では実現できなかった施策を実施するために,新たな情報技術を採用することがある。本問は,ITストラテジストが,新たな情報技術の採用において,施策を実施するために情報技術について何を机上確認し,どのような技術検証を行ったか,企画を推進する上でのリスクとその対策について何を経営層に説明したかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITストラテジストに必要な,情報技術を評価する能力,DXへの技術活用の能力,経営層への説明力などを評価する。
問1では,昨今,取り組まれることの多いAIやIoTをテーマにした多様な論述が見受けられ,新たな情報技術を使った概念実証(PoC)のプロジェクトに携わった経験のある受験者には比較的論述しやすい題材だったと思われる。一方で,製品選定にとどまっている論述,取組の手順だけを説明し,検証内容や結果が説明されていない論述,技術的な検証に終始した論述も散見された。技術検証の結果を,経営や事業の観点からどのように評価したのか,経営層が認識すべきリスクと対策が何かを論述してほしい。また,DXの狙いが何か,なぜその情報技術が必要なのかが具体的ではない論述や,デジタル技術の導入に終始している論述も散見された。ITストラテジストとして,事業の変革に向けた取組と,情報技術を正しく理解した上で,DXを企画,推進する力を身に付けてほしい。
問題本文
DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた新たな情報技術の採用について
企業は,情報技術を使った新サービスの開発や既存事業の改革などの施策を企画し,DXを実現する。その施策の中で,従来の情報技術では実現できなかったことを実現するために,企業にとって利用実績の乏しい,AIやIoTなどの新たな情報技術の採用を検討することがある。
ITストラテジストは,新たな情報技術の採用に関する検討の中で,その情報技術によって施策を実施できるかどうかについて,机上確認と技術検証を行う。例えば,業務要件への適合性,業界における規制への対応,性能・拡張性・セキュリティなどの非機能要件への適合性,情報技術の利用における継続性などについて机上確認し,その後,試験的な導入やシミュレーションなどを通じて,技術検証を行う。
机上確認と技術検証を通して,事業への適用におけるその情報技術の特性を理解した上で,リスクとその対策を具体化する。例えば,AI倫理などのコンプライアンスに関するリスク,計画していた予算や体制などの経営リソースに影響を及ぼすリスクなどを確認し,それらへの対策とともに経営層に説明し,承認を得る必要がある。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。
設問と解答・解説
設問ア
あなたが携わったDXの実現に向けた新たな情報技術の採用について,DXの狙い,施策の内容,検討対象となった新たな情報技術とその必要性を,事業特性とともに,800字以内で述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 34点)
知識・理解度(内容)(17点)
- 17点: DXの狙い、施策の内容、新たな情報技術とその必要性、事業特性のすべてが極めて具体的に記述されており、事業変革の企画として妥当である。
- 13点: 求められる要素は概ね記述されているが、一部の具体性がやや乏しい。
- 9点: 要素は記述されているが、DXの狙いや技術の必要性が不十分、あるいは単なるデジタル化の記述に留まっている。
- 4点: 記述が不足しており、情報技術の必要性や事業特性への言及が極めて不十分である。
- 0点: 設問で求められている要素がほとんど記述されていない。
論理性(構造)(17点)
- 17点: 事業特性からDXの狙い、そして技術の必要性への展開が一貫した論理で構成されており、説得力が極めて高い。
- 13点: 概ね一貫した論理で構成されているが、一部のつながりがやや不明瞭である。
- 9点: 論理的なつながりが見られるが、事業特性と技術の必要性との関連が弱い。
- 4点: 全体的に論理的な飛躍が目立ち、つながりが不明確である。
- 0点: 論理的な構造を成していない。
解説
本問は、DXの実現に向けて新たな情報技術を採用する際の初期段階として、DXの狙い、施策の内容、採用する新たな情報技術とその必要性を、事業特性と関連付けて論述することが求められます。
高得点のポイント
- 事業特性(業界の状況、自社の強み・弱みなど)を踏まえた上で、なぜそのDXの狙いが必要なのかが論理的に説明されていること。
- 単なる「デジタル技術の導入」や「既存業務の効率化」にとどまらず、新しい価値創出やビジネスモデルの変革といったDX本来の目的が示されていること。
- 採用する新たな情報技術(AI、IoTなど)が、従来の技術では実現できなかったどのような課題を解決するのか(必要性)が明確に記述されていること。
設問イ
設問アで述べた新たな情報技術について,施策の実施に向けて,あなたはどのような机上確認と技術検証を行ったか,その結果や工夫したこととともに,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
知識・理解度(内容)(17点)
- 17点: 机上確認と技術検証の内容、結果、工夫した点が極めて具体的に記述されており、手順や製品選定の域を超えた深い内容となっている。
- 13点: 求められる要素は記述されているが、工夫した点や検証内容の具体性がやや乏しい。
- 9点: 検証結果の説明が不足している、または技術的な検証手順の説明のみに偏っている。
- 4点: 記述内容が不十分であり、机上確認や技術検証の内容が不明確である。
- 0点: 設問で求められている要素がほとんど記述されていない。
説得力(考察)(16点)
- 16点: 技術検証の結果を、技術面だけでなく経営や事業の観点からどのように評価したかが説得力をもって深く考察されている。
- 12点: 経営や事業の観点からの評価が記述されているが、考察の深さがやや足りない。
- 8点: 評価が主に技術的な観点にとどまっており、事業の観点からの考察が不足している。
- 4点: 考察が浅く、単なる結果の羅列にとどまっている。
- 0点: 考察が全く見られない。
解説
本問は、設問アで取り上げた新たな情報技術を実際の施策に適用するにあたり、ITストラテジストとして実施した机上確認および技術検証のプロセスとその結果、プロセスにおける工夫を具体的に論述することが求められます。
高得点のポイント
- 単なる製品の機能比較や手順の説明に終始せず、PoC(概念実証)などを通じた実践的な技術検証の内容が具体的に記載されていること。
- 検証を行うにあたり、評価指標の設定や検証環境の構築などでITストラテジストならではの工夫が示されていること。
- 技術検証の結果を単なる「技術的な成否」として捉えるのではなく、経営や事業の観点からどのように評価したか(事業への適用可能性があるか、期待する効果が得られるか)が説得力をもって説明されていること。
設問ウ
設問イで述べた情報技術を採用するに当たって,机上確認と技術検証を通して,あなたはどのようなリスクとその対策を具体化し,経営層にどのように説明したか,経営層からの指摘,指摘を受けて改善したこととともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
知識・理解度(内容)(17点)
- 17点: リスクと対策、経営層への説明、指摘内容、改善したことのすべてが極めて具体的に網羅され、実践的な内容となっている。
- 13点: 全ての要素が記述されているが、経営層の指摘や改善内容などの具体性がやや欠ける。
- 9点: リスクや対策の記述が表面的である、または経営層とのやり取りの記述が乏しい。
- 4点: リスクと対策など重要な要素のいずれかが欠落している、または著しく具体性に欠ける。
- 0点: 設問で求められている要素がほとんど記述されていない。
説得力(考察)(16点)
- 16点: 経営層が認識すべき事業上のリスクと対策が的確であり、経営視点を踏まえた説明や改善内容がITストラテジストとして極めて高い説得力を持つ。
- 12点: リスク対策や説明内容は妥当であるが、経営層の視点からの深みがやや不足している。
- 8点: リスクが技術的なものに偏っており、経営や事業の観点からの説得力が乏しい。
- 4点: 経営層への説明や改善内容の妥当性が低く、説得力に欠ける。
- 0点: 説得力が全く見られない。
解説
本問は、技術検証の結果を踏まえて情報技術を本格採用する際に、リスクとその対策を具体化し、それを経営層にどう説明したか、さらに経営層からの指摘とそれを受けた改善内容を論述することが求められます。
高得点のポイント
- セキュリティや運用保守といった技術的リスクだけでなく、投資対効果や法規制対応、業務プロセスの移行といった事業・経営レベルのリスクと、その現実的な対策が提示されていること。
- 経営層が理解し判断できるよう、技術用語を避け、事業価値や定量的効果を交えた説明の工夫が記述されていること。
- 経営層からの指摘を真摯に受け止め、それが計画や企画にどのように反映され、より実現性の高い計画へと改善されたかが、具体的かつ説得力を持って述べられていること。