令和5年度 秋期 応用情報技術者試験 午後問題 問5 メールサーバ構築とDNS・セキュリティ設計
この問題は2023(R5)秋 応用情報技術者 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。
学習ガイド
広告・マーケティングに欠かせなくなった電子メールの基盤として、メールサーバを新たに構築する場面を扱ったネットワークの問題です。MXレコードによる配送先の解決から、SMTP・POPといったプロトコルの理解、そして第三者中継を防ぐようなセキュリティ設計までが一続きに問われます。図中の字句を使って空欄を埋める設問と解答群から選ぶ設問が混在するため、この記事ではDNSの名前解決とメール配送の流れを軸に、送受信テストの読み取りまで各空欄の根拠をたどります。
この記事で押さえる論点
- DNSのMXレコードなどメール配送に必要なレコードの役割を説明する
- SMTP・POP・IMAPなど電子メールプロトコルの動きを整理する
- メールサーバのセキュリティ設計上の留意点を空欄から特定する
- 送受信テストの結果からサーバ設定の妥当性を判断する
出題情報
- 出題
- 2023(R5)秋 応用情報技術者 午後 問5
- 配点
- 20点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
昨今,電子メールやWebなどのインターネット技術を活用した,商品の広告やマーケティングは,企業の広報活動においてなくてはならない存在となった。本問では,メールサーバの構築を題材として,DNSや電子メール技術に関する基本的な理解と,メールサーバ構築時におけるセキュリティ設計能力について問う。
問5では,新ブランドの広報に用いるメールサーバの構築を題材に,DNSや電子メール技術について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
メールサーバの構築に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
L社は,複数の衣料品ブランドを手がけるアパレル会社である。L社では,顧客層を拡大するために,新しい衣料品ブランド(以下,新ブランドという)を立ち上げることにした。新ブランドの立ち上げに向けて,L社の社員20名で構成するプロジェクトチームを結成し,都内のオフィスビルにプロジェクトルームを新設した。新ブランドの知名度向上のために新ブランド用Webサイトと新ブランド用メールアドレスを利用した電子メール(以下,メールという)による広報を計画しており,プロジェクトチームのMさんが,Webサーバ機能とメールサーバ機能を有する広報サーバを構築することになった。
〔プロジェクトルームのネットワーク設計〕
Mさんは,新ブランドのプロジェクトチームのメンバーが各メンバーに配布されたPC(以下,広報PCという)を利用して,新ブランド用Webサイトの更新や,新ブランド用メールアドレスによるメールの送受信を行う設計を考えた。Mさんが考えたネットワーク構成(抜粋)を図1に示す。

図の説明テキスト
「L社新ブランドプロジェクトルーム」「ISP N社」「インターネット」「L社本社」の4つの領域が示されている。
- L社新ブランドプロジェクトルーム:
- FW1: 光回線を介してISP N社のルータに接続。IPアドレス「w.x.y.z」を持つ。内部ネットワークには2つのセグメントがある。
- 内部セグメント1: ゲートウェイ「192.168.1.1/24」。広報サーバ(192.168.1.10/24)が接続されている。
- 内部セグメント2: ゲートウェイ「192.168.0.1/24」。複数の広報PCが接続されている。
- ISP N社:
- ルータ: L社新ブランドプロジェクトルームへの光回線と、インターネットに接続されている。内部ネットワークには「メールサーバ」と「DNSサーバ」が接続されている。
- インターネット:
- 雲のマークで描画されており、ISP N社のルータとL社本社のFW2を中継している。
- L社本社:
- FW2: インターネットに接続されている。内部ネットワークには「L社メールサーバ」と複数の「PC」が接続されている。
注記1: w.x.y.z はグローバルIPアドレスを示す。
注記2: FWはファイアウォールを示す。
Mさんが考えたネットワーク構成は次のとおりである。
- プロジェクトルーム内に広報サーバを設置し,FW1に接続する。
- インターネット接続は,ISP N社のサービスを利用し,N社とFW1とを光回線で接続する。
- 広報サーバのメールサーバ機能は, SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) によるメール送信機能と POP (Post Office Protocol) によるメール受信機能の二つの機能を実装する。
- FW1に NAPT (Network Address Port Translation) の設定と, インターネット上の機器から広報サーバにメールと Webの通信だけができるように, インターネットから FW1宛てに送信された IPパケットのうち, aポート番号が 25, 80, 又はbの IPパケットだけを, 広報サーバの IPアドレスに転送する設定を行う。
N社のインターネット接続サービスでは, N社の DNSサーバを利用した名前解決の機能と, N社のメールサーバを中継サーバとして N社のネットワーク外へメールを転送する機能が提供されている。
〔新ブランドのドメイン名取得と DNSの設計〕
新ブランドのドメイン名として "example.jp" を取得し, 広報サーバを Webサーバとメールサーバとして利用できるように, N社の DNSサーバにホスト名や IPアドレスなどのゾーン情報を設定することを考えた。DNSサーバに設定するゾーン情報(抜粋)を図2に示す。

図の説明テキスト
| ホスト名等 | TTL/クラス | レコードタイプ | 値1 | 値2 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| @ORIGIN example.jp. | $TTL 86400 IN | SOA | ns.example.jp. | ※省略 | |
| IN | NS | ※省略 | |||
| IN | MX | 10 | c .example.jp. | ||
| www.example.jp. | IN | CNAME | serv.example.jp. | ||
| serv.example.jp. | IN | A | d |
〔メール送受信のテスト〕
Mさんの設計が承認され, ネットワークの工事及び広報サーバの設定が完了した。新ブランドのメール受信のテストのために, Mさんは, L社本社の PCを用いて L社の自分のメールアドレスから新ブランドの自分のメールアドレスである syainM@example.jp へメールを送信し, エラーなくメールが送信できることを確認した。次に, 新ブランドプロジェクトルームの広報PCのメールソフトウェアに受信メールサーバとして serv.example.jp, POP3のポート番号として 110番ポートを設定し, メール受信のテストを行った。しかし, メールソフトウェアのメール受信ボタンを押してもエラーが発生し, メールを受信できなかった。広報サーバのログを確認したところ, 広報PCからのアクセスはログに記録されていなかった。
Mさんは, 設定の誤りに気づき, ①メールの受信エラーの問題を修正してメールが受信できることを確認した後に, 広報PCからメール送信のテストを行った。テストの結果, 新ブランドの管理者のメールアドレスである kanriD@example.jp から syainM@example.jp 宛てのメールは届いたが, kanriD@example.jp からインターネット上の他ドメインのメールアドレス宛てのメールは届かなかった。広報サーバのログを確認したところ, N社のネットワークを経由した宛先ドメインのメールサーバへの TCPコネクションの確立に失敗したことを示すメッセージが記録されていた。
調査の結果, 他ドメインのメールアドレス宛てのメールが届かなかった事象は, N社の ②OP25B (Outbound Port 25 Blocking) と呼ばれる対策によるものであることが分かった。OP25Bは, N社からインターネット宛てに送信される宛先ポート番号が 25 の IPパケットのうち, N社のメールサーバ以外から送信された IPパケットを遮断する対策である。このセキュリティ対策に対応するため, ③広報サーバに必要な設定を行い, インターネット上の他ドメインのメールアドレス宛てのメールも届くことを確認した。
〔メールサーバのセキュリティ対策〕
広報サーバが大量のメールを送信する踏み台サーバとして不正利用されないために, メールの送信を許可する接続元のネットワークアドレスとして e /24 を広報サーバに設定する対策を行った。また, プロジェクトチームのメンバーのメールアドレスとパスワードを利用して, 広報PCからメール送信時に広報サーバで SMTP認証を行う設定を追加した。
その後, Mさんは広報サーバとネットワークの構築を完了させ, L社は新ブランドの広報を開始した。
設問と解答・解説
設問1
(1)
模範解答
選択肢オ: 宛先
配点 1点
解説
本問は、電子メールの送信トラブルとセキュリティ対策(OP25B)に関する基本的な知識を問う設問です。
OP25B(Outbound Port 25 Blocking)は、自組織のネットワークから外部ネットワークへの直接のメール送信(スパムメールの送信など)を防ぐための仕組みです。
具体的には、外部のメールサーバに対して、宛先のポート番号が 25 である通信をファイアウォール等で遮断します。
したがって、空欄aには通信の向き先を示す「宛先」が入ります。
各選択肢の解説
- ア (21), イ (22), ウ (23): FTP、SSH、Telnetなどのポート番号であり、OP25Bとは関係ありません。
- エ (443): HTTPSのポート番号であり、本空欄には該当しません。
- カ (送信元): 遮断対象となるのは送信元ポートではなく、宛先のポート番号25です。
(2)
模範解答
選択肢エ: 443
配点 1点
解説
本問は、電子メールやWebなどのインターネット技術に関する知識を問う設問です。
OP25B環境下であっても、利用者が外部のメールサーバやWebメールを安全に利用できるよう、代替のポートが利用されます。
利用者が外出先からWebブラウザを用いてセキュアにアクセスする場合などに用いられる、HTTPSのポート番号は 443 です。文脈から適切なポート番号を選択します。
各選択肢の解説
- ア (21), イ (22), ウ (23): これらはFTP、SSH、Telnetのポート番号であり、一般的なセキュアなWeb通信の代替とはなりません。
- オ (宛先), カ (送信元): ポート番号を問う空欄には不適切です。
設問2
(1)
模範解答
serv
www
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 「serv」および「www」の両方を正しく解答している。
- 1点: 「serv」または「www」のいずれか片方のみ解答している。
- 0点: 解答が誤っている、または無解答。
解説
DNSサーバのゾーン情報(リソースレコード)に関する問題です。
図中において、ホスト名とIPアドレスを対応付けるAレコードなどの設定が行われています。
メールサーバやWebサーバのFQDN(完全修飾ドメイン名)は、ホスト名とドメイン名を組み合わせたものです。
解答としては、図1・図2に提示されているサーバのホスト名である serv および www が該当します。
高得点のポイント
- DNSレコードの設定において、対象となるホスト名を正確に抜き出していること。
- 指定された図中の字句をそのまま使用し、過不足なく解答していること。
(2)
模範解答
w.x.y.z
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 「w.x.y.z」と正しく解答している。
- 0点: 解答が誤っている、または無解答。
解説
DNSのAレコードの記述に関する問題です。
Aレコードは、指定されたホスト名(FQDN)に対するIPv4アドレスを定義するものです。
図2のゾーン定義において、ホスト名に対する正しいIPアドレスの値として、図中の広報サーバまたは関連サーバのIPアドレスである w.x.y.z を記述する必要があります。
高得点のポイント
- ホスト名と対応するIPアドレスの関係を正しく読み取れていること。
- 該当するIPアドレスを、図中の表記(w.x.y.z)の通りに正確に抜き出していること。
設問3
〔メール送受信のテスト〕について答えよ。
(1)
本文中の下線①について,エラーの問題を修正するために変更したメールソフトウェアの設定項目を15字以内で答えよ。
模範解答
受信メールサーバ
採点基準(配点 2点)
知識・理解度(内容)(1点)
- 1点: メールを受信するサーバの設定に関する解答である旨が示されている(DNS技術に関する基礎的な理解に基づく)。
- 0点: 内容が不適切、または無解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 「受信メールサーバ」等の適切な用語を用いて簡潔に記述されている。
- 0点: 用語の誤りがある、または意味が通じない。
解説
メール送受信のテストにおける、メールソフトウェアの設定に関する問題です。
エラーの問題を修正するためには、PCのメールソフトウェアにおいて、メールを受信するためのサーバの指定を正しく行う必要があります。
DNSサーバに登録されたFQDNとIPアドレスの対応関係等を踏まえ、クライアント側で変更すべき設定項目は 受信メールサーバ(またはPOP/IMAPサーバ)となります。
高得点のポイント
- エラーの原因が受信側の設定にあることを見抜き、適切な設定項目名を挙げていること。
- 15字以内という文字数制限を厳守し、簡潔に記述していること。
(2)
変更後の設定内容を図1,図2中の字句を用いて答えよ。
模範解答
192.168.1.10
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 「192.168.1.10」と正しく解答している。
- 0点: 解答が誤っている、または無解答。
解説
DNSサーバに登録されたFQDNとIPアドレスの対応に関する問題です。
テストにおいて、名前解決の結果として設定すべき正確な接続先を指定する必要があります。
問題文中の図1・図2から、該当するサーバ(受信メールサーバ等)のIPアドレスは 192.168.1.10 であることが読み取れます。
高得点のポイント
- DNSの名前解決の仕組みを理解し、FQDNに対応するIPアドレスを正確に特定できていること。
- 図中の字句(192.168.1.10)を誤りなく記述していること。
(3)
本文中の下線②について,OP25Bによって軽減できるサイバーセキュリティ上の脅威は何か,最も適切なものを解答群の中から選び,記号で答えよ。
模範解答
選択肢エ: スパムメールの送信に広報サーバが利用される。
配点 1点
解説
OP25B(Outbound Port 25 Blocking)のセキュリティ上の導入目的を問う問題です。
OP25Bは、組織内の端末やサーバがマルウェアに感染するなどして、外部のメールサーバのポート25へ直接通信し、スパムメールを大量送信することを防ぐための対策です。
これにより、自組織のサーバが スパムメールの送信に利用される(踏み台にされる) 脅威を効果的に軽減できます。
各選択肢の解説
- ア (広報PCが第三者のWebサービスへのDDoS攻撃の踏み台にされる。): OP25Bはメール送信(ポート25)の制限であり、WebサービスへのDDoS攻撃対策ではありません。
- イ (広報PCに外部からアクセス可能なバックドアを仕掛けられる。): バックドアの設置や外部からの侵入を防ぐのはファイアウォールのインバウンドルールの役割であり、OP25Bの効果ではありません。
- ウ (広報サーバが受信したメールを不正に参照される。): メールの不正参照は認証の不備や通信の盗聴によるものであり、OP25Bでは防げません。
(4)
本文中の下線③について,広報サーバに行う設定を,図1中の機器名を用いて35字以内で答えよ。
模範解答
N社のメールサーバを中継サーバとしてメールを送信する設定
採点基準(配点 2点)
知識・理解度(内容)(1点)
- 1点: OP25B回避のため、ISPのサーバを中継(リレー)として利用する意図が明確に示されている。
- 0点: 内容が不適切、または無解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 指定された図1中の機器名(N社のメールサーバ)を用い、適切な文脈で構成されている。
- 0点: 指定の機器名が用いられていない、または文脈が不自然である。
解説
OP25B環境下におけるメール送信設定に関する問題です。
OP25Bが実施されている環境では、自組織のメールサーバから外部のドメインに対して直接ポート25でメールを送信することができません。
これを回避するためには、契約しているISP(ここではN社)が用意したメールサーバ(リレーサーバ)へ送信を依頼し、そこから外部へ中継してもらう設定(スマートホスト設定)が必要となります。
高得点のポイント
- OP25Bの制限を回避するための「メール中継(リレー)」の概念を正しく理解していること。
- 指示通り図1中の機器名(N社のメールサーバ)を明記していること。
- 35字以内で論理的にまとまった文脈になっていること。
設問3(1)は,正答率が低かった。PCのメールソフトウェアの設定項目と設定内容を題材として,DNSサーバに登録されたFQDNとIPアドレスの対応関係やDNSが用いるポート番号について問うた。DNSはWebなどのインターネットに関する技術の基盤となるものであるので,是非理解しておいてほしい。
設問4
本文中の e に入れる適切なネットワークアドレスを答えよ。
模範解答
192.168.0.0
採点基準(配点 4点)
正確性(内容)(4点)
- 4点: 「192.168.0.0」と正しく解答している。
- 0点: 端末のIPアドレスなど誤った値を解答している、または無解答。
解説
ネットワークアドレスとホストアドレスの概念に関する問題です。
メールサーバの送信許可設定(リレー許可など)においては、個別のIPアドレスではなく、対象となるネットワーク全体を指定することが一般的です。
許可対象のIPアドレス群が属するネットワークアドレスは、IPアドレスのネットワーク部を残し、ホスト部をすべて0とした値になります。
したがって、該当するネットワークアドレスは 192.168.0.0 となります。
解説文にもある通り、端末の個別のIPアドレスを解答しないよう、IPアドレスの基礎知識をしっかりと整理しておくことが重要です。
高得点のポイント
- 端末のIPアドレスではなく、ネットワークアドレスを正しく計算・特定できていること。
- ホスト部を0とした正しいネットワークアドレス(192.168.0.0)を記載していること。
設問4は,正答率が低かった。広報サーバがメール送信を許可するネットワークアドレスを問うたが,端末のIPアドレスの解答が散見された。IPアドレスにおけるネットワーク部,ホスト部の考え方は,ネットワーク設計を行う上で基礎となるものであるので,是非理解しておいてほしい。