令和6年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問11 業務パッケージ間連携の監査手続
マネジメントシステム監査
この問題は2024(R6)春 応用情報技術者 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
複数の業務パッケージを組み合わせた支払管理システムの監査を題材にした問題です。パッケージ間のデータ連携や、標準機能を補完する手作業にこそ誤り・不正のリスクが潜むという発想で、監査手続案の空欄を埋めていきます。この記事では、システム構成図の連携経路を紙上でたどり、どこで一貫性が崩れ得るかを特定した上で、監査要点と手続の対応を確認します。手作業に注目する読み方が身に付く問題です。
この記事で押さえる論点
- パッケージ標準機能と手作業を組み合わせたコントロールの弱点を見抜く
- データの一貫性を確かめる監査手続を具体化する
- 監査要点と監査手続の対応関係を表から読み取る
出題情報
- 出題
- 2024(R6)春 応用情報技術者 午後 問11
- 配点
- 20点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
業務システムを効率よく導入するに当たり,機能別に最適な業務パッケージを組み合わせて,システムを構築することが増えている。この場合,業務パッケージ間の連携,パッケージ標準機能とこれを補完する手作業を組み合わせる必要がある。本問では,業務パッケージである支払管理システムを題材にして,業務パッケージ機能だけでなく,手作業を含めたコントロールの妥当性及びデータの一貫性におけるシステム監査の基本的な理解を問う。
問11では,支払管理システムを題材に,パッケージ標準機能とこれを補完する手作業の組み合わせによるコントロールの妥当性及びデータの一貫性に関する監査手続について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
支払管理システムの監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
V社は大手の製造会社であり,2年前に12年間利用していた自社開発の債務管理システムから業務パッケージを利用した支払管理システムに移行した。そこで,内部監査室は,支払管理システムの運用状況に関するシステム監査を実施することにした。
〔支払管理システム及び関連システムの概要〕
支払管理システム及び関連システムの概要を図1に示す。

図の説明テキスト
3つの主要システム(調達管理システム、支払管理システム、会計システム)とデータ入力の関係を示すブロック図である。
・「支払先マスター登録」と「支払申請・承認入力」から「支払管理システム」へ下向きの矢印が引かれている。
・「調達管理システム」から「支払管理システム」へ右向きの矢印が引かれている。
・「支払管理システム」から「会計システム」へ右向きの矢印が引かれている。
・各システム内のデータ:
- 調達管理システム: 「取引先マスター」「調達実績データ」
- 支払管理システム: 「支払先マスター」「保留ファイル」「支払予定データ」「振込データ」
- 会計システム: 「仕訳データ」
(1) 支払管理システムは業務パッケージの標準機能を利用し,約1年間で,企画,要件定義,業務パッケージ選定,設計,開発,テスト及びリリースの各段階を経て移行された。V社では,規程類に適合しない機能を採用する場合は,対応策を含めて,リスク委員会の承認を受ける必要がある。
(2) 会計システムは業務パッケージである。
(3) 調達管理システムは,10年前に構築した自社開発システムであり,各工場製造部の原料及び外注加工に関する見積依頼・発注・入荷・検収を管理している。検収入力で作成される調達実績データは,半月ごとに支払管理システムへ取り込まれる。
(4) 4年前に実施された債務管理システムのシステム監査では,規程類に適合した機能が導入され,運用されていると結論付けられ,指摘事項はなかった。
(5) 昨年実施された調達管理システムの監査では,取引先別の調達実績データの合計額が支払管理システムの支払予定データの合計額と一致していないことが発見された。これについて,調達管理システムには問題はなく,支払管理システムの運用状況の詳細な調査が必要と結論付けられ,経理部で調査中とのことである。
〔支払管理システムの運用の概要〕
監査担当者が予備調査で把握した内容は,次のとおりである。
(1) 支払管理システムでは,業務パッケージの標準機能である利用者ID情報管理機能及びパスワード管理機能を利用している。承認された利用者ID申請書が情報システム部サポート担当に提出され,利用者ID情報が登録,変更,削除される。利用者ID情報には,利用者ID,利用者名,部署名,各メニューの利用権限などが含まれ,登録・変更・削除履歴は利用者ID更新ログに記録される。業務パッケージのパスワードポリシーの一部には,規程類に適合するようにパスワードポリシーを適用できない箇所があった。
(2) 支払管理システムに関連するプロセスは,次のとおりである。
- 経費精算などは,支払管理システムに支払申請入力を行い,承認者が承認入力を行うことで支払予定データが生成される。支払予定データは修正できないので,支払額を減額したい場合は,減額の支払申請を入力する。
- 支払規程によると,支払金額が一定額を超過する場合には,事業本部長の承認及び担当役員の承認が必要になる。支払管理システムには,一つの申請に対し複数の承認者を設定する機能がないので,承認入力後に承認者から必要な上位者に経理部宛のCCを含む電子メールで承認を受ける手続としている。
- 支払申請入力では,請求書・領収書などの証ひょう類を承認者に回付せず,申請者が入力後に経理部に送付する。経理部は,支払予定データについて一定額超過の承認メールを含む証ひょう類に不備がないかチェックする。経理部は,証ひょう類に不備のある支払予定データについて,未承認の状態に変更することができ,その場合は,申請者に電子メールで通知される。また,各工場管理部は調達管理システムの調達実績データについて,取引先からの請求書とチェックしている。
- 調達実績データから支払予定データを生成するには支払先マスターに調達連携用の支払先(以下,調達用支払先という)を登録しておく必要がある。調達用支払先は,調達管理システムに関する支払業務以外では利用しない。
- 支払管理システムでは,半月ごとの調達実績データの取込処理によって,支払予定データが生成される。取込処理の実行時にエラーがあった場合は,情報システム部でエラー対応を行う。一方,エラーではないが支払先マスターに調達用支払先が未登録などの場合は,保留ファイルに格納される。経理部は保留ファイルに対し,支払先マスター登録などの対応後に保留ファイルの更新処理を実行する一連の作業を行う。
- 原料・外注加工費は半月ごとに支払が行われるので,調達管理システムでの検収入力が遅れ,次回の取込処理となってしまうと支払遅延となる。そこで,支払遅延とならないように工場製造部の申請に基づき,工場管理部は,当該取引先に対応した調達用支払先を利用して追加の支払申請入力を行う。また,次回の取込処理までに重複防止のための減額の支払申請入力が必要となる。
- 経理部は,作業が完了した支払予定データに対して振込データ作成画面で対象範囲を指定して,銀行に送信する振込データを作成する。
〔監査手続の作成〕
監査担当者が,予備調査に基づき策定した監査手続案を表1に示す。

図の説明テキスト
| 項番 | 監査要点 | 監査手続 |
|---|---|---|
| 1 | 利用者IDは, 適切に登録, 変更, 削除される。 | ・利用者ID申請書が適切に作成, 承認され, 利用者ID申請書の内容と利用者ID情報が一致しているか確かめる。 |
| 2 | 利用者IDのパスワードは, 適切に設定される。 | ・利用者IDのパスワードポリシーが, V社のパスワードの規程類に準拠しているか確かめる。 |
| 3 | 支払予定データは, 調達実績データによって適切に作成される。 | ・支払先マスターが正確に登録されるかどうか確かめる。 ・調達実績データの取込処理が漏れなく実行され, エラーが発生した場合は適切に対処されているか確かめる。 |
| 4 | 経費精算などの支払予定データは, 適切に承認される。 | ・支払管理システムの承認権限が適切に付与されているか確かめる。 ・支払申請が未承認で残っていないか確かめる。 |
| 5 | 振込データは, 適切に作成される。 | ・経理部が振込データの作成範囲に漏れがないことをチェックしているかを確かめる。 |
内部監査室長は,表1をレビューし,次のとおり監査担当者に指示した。
(1) 表1項番2の監査手続は,予備調査の結果を踏まえると不備が発見される可能性が高い。これに対応する追加手続として, a 段階で b が行われていたかどうかについての監査手続を含めるべきである。
(2) 表1項番3の監査手続だけでは,監査要点を十分に評価できない。 c に対する作業について評価する監査手続を追加すること。
(3) 表1項番4の監査手続だけでは,監査要点を十分に評価できない。支払金額が d の支払予定データについては,監査手続を追加すること。
(4) 表1項番5について,支払予定データに対して経理部の e が振込データ作成前に完了していることを確かめる監査手続を追加すること。
(5) 昨年度のシステム監査での発見事項については,表1の項番 f で確かめている。その他,差異が発生する可能性のある次の二つの事象に関する監査要点及び監査手続を追加すること。
- 調達管理システムと異なる支払申請入力において,間違って g を利用してしまった。
- 支払遅延防止として追加の支払申請入力した後に, h を行わなかった。
設問と解答・解説
設問1
(1)
模範解答
業務パッケージ選定
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 正解の字句(「業務パッケージ選定」)と完全に一致している。
- 1点: 正解の字句と部分的に一致しているが、不完全である。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容である。
解説
設問の趣旨と正解の根拠
業務パッケージの導入においては、機能別に最適なパッケージを組み合わせるため、事前の十分な検討が不可欠です。
本問では、会社の規程類に適合しない業務パッケージの標準機能を採用するリスクを踏まえ、それが承認されるべき適切な時期を問うています。
- 適合しない標準機能の採用は、後工程で重大な手戻りや業務との不整合を生じさせるリスクがあります。
- したがって、導入を決定する初期段階である 業務パッケージ選定 の段階で、十分な検討と適切な承認が行われる必要があります。
高得点のポイント
- 会社の規程類との適合性を検討する適切なタイミングが 業務パッケージ選定 時であることを正しく理解し、記述できていること。
(2)
模範解答
リスク委員会の承認
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 正解の字句(「リスク委員会の承認」)と完全に一致している。
- 1点: 正解の字句と部分的に一致しているが、不完全である。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容である。
解説
設問の趣旨と正解の根拠
会社の規程類に適合しない業務パッケージの標準機能を採用する場合、通常の承認ルートや権限では対応できず、全社的なリスクとして管理・承認される必要があります。
- そのため、例外的な採用を許可するための機関として リスク委員会の承認 を経ることが求められます。
- これにより、パッケージの標準機能と手作業を組み合わせたコントロールの妥当性が客観的に担保されます。
高得点のポイント
- 通常の承認プロセスではなく、規程外の特例を承認する権限を持つ機関として リスク委員会の承認 が必要であることを正しく記述できていること。
(3)
模範解答
保留ファイル
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 正解の字句(「保留ファイル」)と完全に一致している。
- 1点: 正解の字句と部分的に一致しているが、不完全である。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容である。
解説
設問の趣旨と正解の根拠
支払管理システムにおいて、データの一貫性や正確性を確保するためには、パッケージ間の連携やデータチェック機能が正しく働くことを監査する必要があります。
- 処理中にエラーとなったデータや、承認待ち等の理由で一時的に処理が止まっているデータは、通常 保留ファイル に格納されます。
- 監査手続においては、この 保留ファイル に滞留しているデータの有無や内容を確認することが、コントロールの有効性を確かめる重要なポイントとなります。
高得点のポイント
- エラーデータや未処理データが一時的に格納される場所として 保留ファイル を正しく特定し、記述できていること。
(4)
模範解答
一定額を超過する場合
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 正解の字句(「一定額を超過する場合」)と完全に一致している。
- 1点: 正解の字句と部分的に一致しているが、不完全である。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容である。
解説
設問の趣旨と正解の根拠
支払処理において、すべての取引に対して一律の厳格な承認手続を課すことは非効率であるため、金額等の基準に応じて承認プロセスを変えるのが一般的です。
- 特別な承認や追加のチェックが必要となる条件として、支払金額が 一定額を超過する場合 が設定されています。
- このようなしきい値に基づくコントロールが正しく機能しているかを監査手続に組み込む必要があります。
高得点のポイント
- 追加の承認や手続が必要となる条件として、金額基準である 一定額を超過する場合 を正しく抽出または記述できていること。
設問1のa及びbは,正答率がやや低かった。会社の規程類に適合しない業務パッケージの標準機能を採用するリスクを踏まえて,承認の適切な時期及び手続を解答してほしい。
設問2
〔監査手続の作成〕の e について,どのような作業を確かめるべきか,適切な字句を20字以内で答えよ。
模範解答
証ひょう類に不備がないかのチェック
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 正解の字句(「証ひょう類に不備がないかのチェック」)と完全に一致している。
- 1点: 正解の字句の主要な要素は含まれているが、不完全である。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容である。
解説
設問の趣旨と正解の根拠
業務パッケージの標準機能だけで全てのコントロールを網羅できない場合、それを補完する手作業の統制活動が極めて重要となります。
- システム上の承認やチェックに加え、承認者が原本となる 証ひょう類に不備がないかのチェック を行うことが求められます。
- システム監査においては、システム外の手作業による確認プロセス(紙ベースの領収書や請求書等の証ひょう類の確認)が確実に実施されているかを確かめる必要があります。
高得点のポイント
- システム機能で代替できない手作業のコントロールとして、原本である 証ひょう類に不備がないかのチェック を実施すべきであることを正しく記述できていること。
設問3
〔監査手続の作成〕の f に入れる最も適切な監査要点を表1の中から選び,表1の項番で答えよ。
模範解答
3
配点 3点
解説
設問の趣旨と正解の根拠
本問は、業務パッケージ間のデータ連携の正確性及び完全性を確かめるための適切な監査要点を選択する設問です。
- 設問の文脈から、監査手続「調達実績データと支払予定データの突合」などに対応する監査要点が求められています。
- データの一貫性と正確性を確保するための統制目標として、表1の項番 3 が最も適切に該当します。
各選択肢の解説
- 項番3(正解): 調達から支払に至るデータ連携において、網羅性や正確性を担保するための監査要点として文脈に合致しています。
- その他の項番: 業務パッケージの導入計画や、個別のシステム機能自体のテストに関する監査要点であり、手作業を含めたデータの一貫性を確かめる本設問の意図(突合手続の目的)とは異なります。
設問4
(1)
模範解答
調達用支払先
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 正解の字句(「調達用支払先」)と完全に一致している。
- 1点: 正解の字句と部分的に一致しているが、不完全である。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容である。
解説
設問の趣旨と正解の根拠
調達実績データから支払予定データを作成する過程で発生する差異の原因について、システム間のマスターデータの連携不備や業務上の例外処理を監査の視点から分析する設問です。
- パッケージ間でマスターが統一されていない場合、取引先の情報不一致が発生するリスクがあります。
- この差異の原因の一つとして、調達システム側と支払管理システム側での 調達用支払先 の不整合が挙げられます。
高得点のポイント
- データ間に差異が生じる原因として、マスターデータの違いに着目し 調達用支払先 を正しく導き出せていること。
(2)
模範解答
減額の支払申請入力
採点基準(配点 3点)
正確性(内容)(3点)
- 3点: 正解の字句(「減額の支払申請入力」)と完全に一致している。
- 1点: 正解の字句と部分的に一致しているが、不完全である。
- 0点: 無解答、または全く異なる内容である。
解説
設問の趣旨と正解の根拠
調達実績データと支払予定データの間に差異が生じる理由として、マスター不整合の他にも、手作業による例外的な処理介入が考えられます。
- 例えば、当初の調達予定額から何らかの理由で支払額を減額する必要が生じた場合、手動での調整入力が行われます。
- したがって、差異を発生させる具体的な原因として 減額の支払申請入力 が該当します。これを監査手続内で確認することが求められます。
高得点のポイント
- システム間の自動連携データに対して、手作業による介入が行われるケースとして 減額の支払申請入力 を挙げていること。
設問4のgは,正答率がやや低かった。調達実績データからの支払予定データ作成について,表1項番3の監査手続を踏まえて,差異が発生するその他の原因を読み取ってほしい。