令和6年度 秋期 システム監査技術者試験 午後 I 問題 問3 ITサービス管理システムの監査

マネジメントシステム監査サービスマネジメント

この問題は2024(R6)秋 システム監査技術者 午後Iに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

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学習ガイド

企業グループ全体で一元化されたITサービス管理システムを監査対象とする問題です。空欄補充形式ですが、問われているのはリスクの認識、対応するコントロールの設計、そしてそれを確かめる監査手続という監査の基本連鎖です。この記事では6つの空欄をこの連鎖のどこに位置するかで分類し、直前の状況記述からどう答えを導くか、45字以内に収める表現の絞り方とあわせて解説します。

この記事で押さえる論点

  • グループ共通のITサービス管理システム固有のリスクを挙げられる
  • リスクに対応するコントロール(機能実装・運用ルール)を具体化する
  • 確認事項・監査手続の空欄を、直前のリスク記述から導く読み方を身に付ける

問題本文

ITサービス管理システムの監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 P社の情報システム子会社のQ社は,P社のグループ各社(以下,各社という)にITサービスを提供している。提供するITサービスの種類と規模が拡大してきたので,より効率的かつ迅速に提供することを目的として,ITサービス管理システム(以下,新システムという)を新規に導入する予定である。P社の内部監査室はP社グループ全体を監査する役割を担っているので,新システムの目的が実現できるように検討されていることを確かめるために,Q社に対するシステム監査を実施することとした。

〔現在のITサービスと申請方法の概要〕

 現在,Q社が提供しているITサービスと申請方法の概要は次のとおりである。
(1) ITサービスの内容と申請方法
 ITサービスには,PC,サーバ,電子メールや事務処理のソフトウェアなどを利用するための定型サービスと,業務で利用する情報システムの開発などのSIサービスの2種類がある。Q社は,P社グループ内での情報共有のための掲示板システムに,ITサービスの仕様などを記載したサービスカタログと申請方法を掲載している。各社のIT部門は,次の(2)と(3)に述べる手順で利用部門からの申請を取りまとめて申請一覧表を作成し,電子メールに添付してQ社へ送付している。

(2) 定型サービスの申請
 Q社では定型サービスの種類ごとに定型サービスチームが設置され,仕様と利用料単価がサービスカタログに記載されている。各サービスの仕様と利用料単価は原則として半年ごとに改定されるが,例外的に半年の間に改定される場合もある。
 サービス提供を希望する利用者は,上長の承認を得た上で各社のIT部門へ申請する。人事異動などに伴い多くの申請が必要な場合には,職場ごとに担当者が取りまとめて申請一覧表を作成し,上長の承認を得た上でIT部門へ申請する。

(3) SIサービスの申請と見積り
 SIサービスは,Q社のSIサービスチームが提供している。各社の利用者はSIサービスの依頼内容を検討し,上長の承認を得た上でIT部門へ申請する。
 SIサービスチームの担当者は,各社のIT部門から届いた申請について,必要に応じて個別にヒアリングした上で費用を利用料として見積もる。その結果は,リーダーが承認した上で,要員などの必要リソースが一定規模を超える場合は SIサービスチームの部長が承認した後,申請元の IT部門経由で利用部門へ通知する。見積りに対する利用部門からの回答が届いた後,正式な申請として受け付ける。

(4) ITサービス利用料管理
 ITサービス利用料は,毎月15日締切りで Q社から各社の IT部門へ請求する。決算期の最終月には 16日から月末までの金額を算出して会計処理を行う必要があり,Q社と各社の両方で手間が掛かっている。

〔新システムの概要〕

内部監査室の監査チームは,予備調査として,Q社内で検討中の新システムの導入企画書案を入手して閲覧するとともに,導入検討プロジェクトのリーダーを務めている Q社の技術管理部長にヒアリングした。その概要は次のとおりである。

(1) 新システムの概要
各社の管理業務を削減するとともに,利用者のニーズに迅速に対応する狙いから,新システムでは利用者が自身で Q社へ申請する。新システムはクラウドサービスを利用して構築する予定で,その概要は図1のとおりである。

(2) 定型サービスの申請
利用者はサービスカタログの内容を確認した上でサービス申請の画面に入力し,利用者の上長が申請を承認した後,関係する定型サービスチームへ通知される。

図1 ITサービス管理システムの概要
図の説明テキスト

3つの領域「Q社」「ITサービス管理システム」「P社グループ各社」の間のシステム連携とデータの流れを示した構成図。

【構成要素】

  • Q社(左側): 「定型サービスチーム」「SIサービスチーム」の2つの部門がある。
  • ITサービス管理システム(中央): 「ITサービス申請管理」の枠内に「サービス利用者マニュアル」「サービスカタログ」「サービス申請」のデータストアがある。また、その下部に「定型サービスマスター」「ITサービス利用料管理」の要素がある。
  • P社グループ各社(右側): 「利用部門」「IT部門」の2つの部門がある。

【データの流れと関係】

  • Q社の「定型サービスチーム」から「サービス利用者マニュアル」および「サービスカタログ」へ「入力」の矢印(実線)。
  • P社グループ各社の「利用部門」から「サービス利用者マニュアル」および「サービスカタログ」へ「閲覧」の矢印(破線)。
  • P社グループ各社の「利用部門」から「サービス申請」へ「入力」の矢印(実線)と「閲覧」の矢印(破線)。
  • 「サービス申請」からQ社の「定型サービスチーム」および「SIサービスチーム」へ「通知」の矢印(実線)。
  • Q社の「SIサービスチーム」から「サービス申請」へ「回答」の矢印(実線)。
  • 「ITサービス利用料管理」からP社グループ各社の「IT部門」へ「請求」の矢印(実線)。
  • 下部の要素「定型サービスマスター」と「ITサービス利用料管理」は、それぞれ上部のシステム要素と関連している(詳細なラベルなし)。

【注記】
図の下部に「注記 P社グループ各社のIT部門は,ITサービス申請管理の各データを閲覧できる。」と記載がある。

定型サービスチームの担当者が受付した後に定型サービスチームのリーダーが承認する。多くの申請を効率的に処理するために,定型サービスチームのリーダーが申請を一覧画面で承認できる機能を提供する予定となっている。

主要な定型サービスにおける申請の受付から提供までのリードタイムは,現在よりも短縮する予定であり,導入企画書案にリードタイムの目標が記載されている。

(3) SIサービスの申請と見積り
新システムでは,SIサービスの申請に対して,SIサービスチームの担当者が画面から見積りを入力し,リーダーが承認する。

(4) ITサービス利用料管理
新システムには,サービスコードをキーとして定型サービスの仕様や利用料単価などを管理する定型サービスマスターがあり,半年ごとに技術管理部が取りまとめて更新する。例外的に半年の間に改定があった場合は,各サービスを担当している定型サービスチームが更新する。

毎月末には,サービス申請のデータに基づき,サービスコードが一致する定型サービスマスターの利用料単価を使用して各社へのサービス請求明細が作成される。サービスコードが一致しなかったサービス申請はエラーとなりリストが出力される。

決算期の最終月の会計処理を効率よく行うために,経理部とITサービス利用料の締切日の変更を協議している。新システム導入の機会に,毎月末時点で当月分を各社へ請求して,当月中のITサービス提供の開始や終了による差額は翌月に精算する方法に変更することを検討している。新システム導入と同時に締切日を変更するので,開発とテストの作業量が多く,かなり厳しい日程となっている。

〔本調査のための検討〕

予備調査の結果を基に,監査チームのリーダーであるT氏は,内部監査室長と本調査のための検討を行った。その内容の抜粋は次のとおりである。

室長:現在は定型サービスで多数の申請がある場合,利用者の上長は一覧表で承認できますが,新システムは申請ごとの承認なので上長は手間が掛かりそうですね。
T氏:定型サービスチームのリーダーに提供予定の機能を活用すれば対応可能ではないかと思われるので,技術管理部にヒアリングして a を確認します。
室長:SIサービスの見積りについて必要な承認が行われるためのコントロールが,新システムで実装されることはどのように確認しますか。
T氏:新システムに,b機能があるかどうかを確認します。
室長:定型サービスの仕様や利用料単価が半年の間に改定される場合は,定型サービ スマスターが適切に更新されない可能性がありますね。
T氏:各定型サービスチームの担当者のために,cを定めるといったコントロールが必要と思われます。
室長:サービスコードが一致しなかった場合のエラーが適切に処理されなければ, dというリスクがありますね。
T氏:エラーに対処する部署や処理方法が明確になっているかどうかを確認します。
室長:今回の新システムは,多くの利用者に直接影響を与えることから,移行時のリスクは極力回避する必要がありますね。
T氏:監査手続としてはeによって,新システム導入後に運用が定着してから締切日を変更することを検討したかどうかを確認します。
室長:主要な定型サービスのリードタイムは,現在よりも短縮する目標を掲げていますが,定型サービスの利用者にも明確にしておく必要がありますね。
T氏:定型サービスを申請する際に閲覧できれば,利用者にも目標が明確になると考えられるので,fを確認することにします。

設問と解答・解説

設問1

T氏が確認すべきと考えた事項として,本文中のaに入れる適切な内容を,45字以内で答えよ。

模範解答

申請を一覧画面で承認できる機能について,利用者の上長への提供を検討していること

採点基準(配点 9点)

正確性(内容)(9点)

  • 9: 「申請を一覧画面で承認できる機能」「利用者の上長への提供を検討」という要素が正確に含まれている。
  • 4: 解答の一部要素が欠けているが、要旨はある程度伝わる。
  • 0: 全く的外れな解答、または無回答。

解説

設問の趣旨

,企業グループ全体に展開するITサービス管理システムにおいて、業務効率化と承認の迅速化に必要な機能の検討状況を問う問題です。,

解説

,システムの導入と運用に関するリスクに対応するため、申請の承認手続きに関する機能の確認事項が求められます。,

  • 利用者の上長への提供が検討されている機能について明確に記述する必要があります。,
  • 特に、複数の申請を効率的に処理するための一覧画面で承認できる機能であることがポイントです。,

高得点のポイント

  • 「申請を一覧画面で承認できる機能」という具体的な機能名が含まれていること,
  • 「利用者の上長への提供を検討している」という状況が記述されていること,- 45字以内という制限字数を遵守していること

設問2

T氏がコントロールとして実装すべきと考えた機能として,本文中のbに入れる適切な内容を,45字以内で答えよ。

模範解答

必要リソースが一定規模を超える見積りの回答はSIサービスチームの部長に回付される

採点基準(配点 9点)

正確性(内容)(9点)

  • 9: 「必要リソースが一定規模を超える」「SIサービスチームの部長に回付される」という要素が正確に含まれている。
  • 4: 解答の一部要素が欠けているが、要旨はある程度伝わる。
  • 0: 全く的外れな解答、または無回答。

解説

設問の趣旨

,一定規模以上の案件に対する承認ルートの適切なコントロール(統制)に関する理解を問う問題です。,

解説

,ITサービスの提供における見積もりプロセスでは、要するリソースの規模に応じたリスク管理が不可欠です。,

  • 必要リソースが一定規模を超える見積りについては、一般の担当者ではなく上位者の判断が必要です。,
  • 回答がSIサービスチームの部長に回付されるという、承認ルート上のコントロールが実装されるべき機能となります。,

高得点のポイント

  • 「必要リソースが一定規模を超える」という条件が明記されていること,
  • 「SIサービスチームの部長に回付される」という承認ルートが記述されていること,- 45字以内という制限字数を遵守していること

設問3

T氏が必要と考えたコントロールとして,本文中のcに入れる適切な内容を,25字以内で答えよ。

模範解答

定型サービスの仕様や利用料単価を改定する手順

採点基準(配点 8点)

正確性(内容)(8点)

  • 8: 「定型サービスの仕様」「利用料単価」「改定する手順」という要素が正確に含まれている。
  • 4: 解答の一部要素が欠けているが、要旨はある程度伝わる。
  • 0: 全く的外れな解答、または無回答。

解説

設問の趣旨

,マスター更新に伴うリスクへの対処として、必要なコントロール(手続きの整備)を問う問題です。,

解説

,マスターデータの不適切な更新は、業務全体に重大な影響を及ぼすため、それを防ぐためのルール作りが必要です。,

  • 更新対象となる定型サービスの仕様利用料単価の変更は、厳格に管理されるべきです。,
  • それらを改定する手順を定め、適切に運用することがコントロールとして機能します。,

高得点のポイント

  • 「定型サービスの仕様」「利用料単価」という対象が含まれていること,
  • それらを「改定する手順」であることが明記されていること,- 25字以内という制限字数を遵守していること

設問3は,正答率が平均的であった。マスター更新に伴うリスクへの対処を基本知識として学んでおくとともに,マスター更新の背景となっている業務リスクへの対処も視野に入れてコントロールを捉えてほしい。

設問4

室長が懸念したリスクとして,本文中のdに入れる適切な内容を,25字以内で答えよ。

模範解答

ITサービス利用料の請求に漏れが生じる

採点基準(配点 8点)

正確性(内容)(8点)

  • 8: 「ITサービス利用料」「請求に漏れが生じる」という要素が正確に含まれており、業務上の影響を簡潔に表現できている。
  • 4: エラー処理未了による影響であることが部分的に触れられている。
  • 0: 全く的外れな解答、または無回答。

解説

設問の趣旨

,システムエラーの未処理に起因して生じる、業務上の具体的な影響(リスク)を簡潔に表現する能力を問う問題です。,

解説

,エラーが処理されず放置されると、その分のサービス請求明細が作成されません。,

  • 請求明細が欠落することで、最終的な業務への影響としてITサービス利用料の請求漏れが発生します。,
  • システム上の原因ではなく、業務上の結果としてのリスクを記述することが求められます。,

高得点のポイント

  • 最終的な影響である「利用料の請求に漏れが生じる」ことが明記されていること,- 25字以内で簡潔にまとめられていること

設問4は,正答率がやや低かった。エラーが処理されなければ,その分のサービス請求明細が作成されず,利用料の請求に漏れが生じるという,業務上の原因と影響を把握して,簡潔に表現できるように努めてほしい。

設問5

T氏が確認するために行った監査手続として,本文中のeに入れる適切な内容を,35字以内で答えよ。

模範解答

締切日の変更についての経理部との協議の議事録を閲覧すること

採点基準(配点 8点)

正確性(内容)(8点)

  • 8: 「締切日の変更」「経理部との協議の議事録」「閲覧すること」という要素が正確に含まれている。
  • 4: 確認対象や監査技法のいずれかが欠けているが、監査手続の意図は伝わる。
  • 0: 全く的外れな解答、または無回答。

解説

設問の趣旨

,リスクへの対処を確認する監査手続として、「どのような主題について、どのような監査証拠を選択・適用するか」を示す能力を問う問題です。,

解説

,監査手続の記述では、確認対象(何を)と監査技法(どのように)を明確にする必要があります。,

  • 確認対象の主題:締切日の変更に関する経理部との協議
  • 監査証拠と技法:該当する議事録閲覧することで、合意の事実を確認します。,

高得点のポイント

  • 「経理部との協議の議事録」という具体的な監査証拠が示されていること,
  • 「閲覧すること」という適切な監査技法が使用されていること,- 35字以内という制限字数を遵守していること

設問5は,正答率がやや低かった。リスクへの対処を確認する監査手続では,どのような主題について,どのような監査技法を選択,適用し,どのような監査証拠によって確認するかを示す必要があることを理解してほしい。

設問6

T氏が確認すべきと考えた事項として,本文中のfに入れる適切な内容を,45字以内で答えよ。

模範解答

定型サービスのサービスカタログにリードタイムの目標が明記される予定になっていること

採点基準(配点 8点)

正確性(内容)(8点)

  • 8: 「定型サービスのサービスカタログ」「リードタイムの目標が明記される予定」という要素が正確に含まれている。
  • 4: 解答の一部要素が欠けているが、要旨はある程度伝わる。
  • 0: 全く的外れな解答、または無回答。

解説

設問の趣旨

,サービスレベル管理において、利用者にリードタイムの目標が明確になっているという状態を達成するための前提事項を問う問題です。,

解説

,利用者がサービス申請を行う際、提供までの時間を事前に把握できるようにする必要があります。,

  • 定型サービスのサービスカタログに、サービスの提供条件が明記されていることが不可欠です。,
  • 特に、リードタイムの目標が明記される予定になっていることを確認することが、監査上のポイントとなります。,

高得点のポイント

  • 「定型サービスのサービスカタログ」という対象が示されていること,
  • 「リードタイムの目標が明記される予定」という記載内容が含まれていること,- 45字以内という制限字数を遵守していること

設問6は,正答率が平均的であった。リードタイムの目標が利用者にも明確になっているという状態を達成する前提として,サービスカタログの内容確認から,サービス申請の画面入力といった業務の流れを理解してほしい。