令和5年度 秋期 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後II 問題 問1 ファイブフォース分析による組込み製品の脅威分析(論文)
ストラテジ経営戦略
この問題は2023(R5)秋 エンベデッドシステムスペシャリスト 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。
学習ガイド
組込み製品の新市場参入・新製品投入を企画する際の脅威分析をファイブフォース分析で論じる午後Ⅱの論述問題です。模範解答は公表されないため、この記事では設問ア〜ウの要求を分解し、採点基準が求める論述要素を読み解きます。DX推進やIoT普及による市場拡大の一方で半導体電子部品不足といった供給側の脅威が顕在化する状況を、供給業者の交渉力や新規参入の脅威として構造的に位置付け、関連部門と連携した対策案とその実施課題まで一貫して書けるかが評価の軸になります。
この記事で押さえる論点
- ファイブフォースの5つの力を組込み製品の市場環境に当てはめて分析する
- 半導体・電子部品不足などの外部脅威を製品企画のリスクとして構造化する
- 特に重要な脅威に対し関連部門と連携した対策案と課題解決を論述する
出題情報
- 出題
- 2023(R5)秋 エンベデッドシステムスペシャリスト 午後II 問1
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
昨今,組込みシステムの市場は,デジタルトランスフォーメーション(DX)推進,IoTの普及などによって,既存市場の拡大とともに新市場への進出の機会も増加している。その一方で,半導体電子部品不足などの問題も見受けられる。そのような状況下では,外部環境によって影響される脅威を分析して,その結果を基に対策案を検討し,自社の優位性を確保することが重要である。本問は,脅威分析の一つであるファイブフォース分析を題材に,新市場への参入,新製品の投入を目的とした製品企画の際の脅威を分析してその分析結果からの対応策について具体的に論述することを求めている。論述を通じて,エンベデッドシステムスペシャリストに必要な企画力,分析力などを評価する。
問1では,多くの論述で,対象の組込みシステムの製品を企画する際の脅威の分析と,その分析結果に基づいた対策案について具体的に論述されていた。一方で,組込みシステムの用途だけが述べられており製品に関する説明が具体性に乏しい論述や,脅威への対策をする際の課題解決に触れていない論述も散見された。エンベデッドシステムスペシャリストにおいては,対象の組込みシステムの製品を企画する際は,想定される脅威を分析し,その対策案の検討とそれらを講ずる際の課題解決を適切にできるように心掛けてほしい。
問題本文
問1 組込みシステムの製品企画段階における脅威分析について
昨今,組込みシステムの市場は,デジタルトランスフォーメーション(DX)推進,IoTの普及などによって,既存市場とともに新市場も拡大している。さらには異業種からの新規参入も増加している。その一方で,半導体電子部品不足などが納期・供給に影響を及ぼしている問題も見受けられる。
そのような状況下で新市場への参入,又は新製品を投入する際には,自社の保有技術などによる強みの分析だけではなく,外部環境によって影響される脅威を分析して,その結果を基に対策案を検討し,自社の優位性を確保することが重要である。
脅威分析の一つに,製品投入後を想定した脅威を分析するファイブフォース分析というフレームワークがある。そのフレームワークを用いて,分析した結果を基に,関連部門と連携しながら協議し,対策案を検討する。
組込みシステムにおけるファイブフォース分析で示される脅威の例を次に示す。
- 既存業者間の競争:競合他社との製品の価格競争,及び競合他社との半導体電子部品などの供給不足による調達での競争に晒(さら)される脅威
- 業界への新規参入者:海外メーカーを含め,新規参入者の資本力・ブランド力などによって優位性を奪われる脅威
- 代替品の存在:業界が異なる別製品で代用できてしまうことによって市場を奪われる脅威
- 買い手(顧客)の交渉力:顧客からの値引き要請などによる利益減少の脅威
- 売り手(サプライヤー)の交渉力:半導体電子部品不足,輸入品を独占的に販売する仕入先からの価格の値上げ,供給遅延などの脅威
これらの脅威に対応するためには,例えば既存業者間の競争では,競合他社との差別化が図れるか,又は複数の調達ルートが確保可能かなどの検討が重要になる。売り手(サプライヤー)の交渉力に関しては,ハードウェア開発部門,調達・購買部門などと連携して協議し,部品変更の容易性を含めた対策案などの検討が考えられる。
製品を企画する際には,自社の優位性を確保するために,ファイブフォース分析のフレームワークなどを活用して複数の脅威を分析し,その結果を基にそれぞれの対策案を関連部門と連携しながら協議し,検討する必要がある。その検討結果から対策を講ずる際の課題を抽出し,事前に解決策案を策定しておくことも重要である。
設問と解答・解説
設問
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って解答せよ。
なお,解答欄には,文章に加えて,図・表を記載してもよい。
(1)
あなたが携わった製品の概要,企画に至った経緯,ファイブフォース分析のフレームワークなどを用いて分析したうちの三つの脅威について,2ページ(800字相当)以内で答えよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 34点)
知識・理解度(内容)(20点)
- 20点: 対象となる製品の概要、企画に至った経緯、フレームワークを用いて分析した3つの脅威が極めて具体的に記述されており、組込みシステムの製品企画として非常に妥当である。
- 15点: 各項目が具体的に記述されており、組込みシステムの製品企画として妥当である。
- 10点: 記述はされているが、組込みシステムの用途のみに留まるなど、製品に関する説明や脅威の記述の具体性がやや乏しい。
- 5点: 各項目の記述が不十分であり、内容が抽象的である。
- 0点: 題意に沿った記述がない。
論理性(構造)(14点)
- 14点: 企画に至った経緯から脅威分析への流れが極めて論理的で、全体として一貫したストーリーとなっている。
- 10点: 企画経緯と抽出された脅威の流れがおおむね論理的に構成されている。
- 7点: 一部のつながりに飛躍が見られるが、全体的な論理構成は理解できる。
- 3点: 論理展開に乏しく、各項目が相互に関連しない羅列になっている。
- 0点: 論理性が欠如している。
解説
本設問は、組込みシステムの製品企画において、外部環境の脅威を分析し、自社の優位性を確保するための第一歩として、対象製品の前提事項と脅威の抽出を求めています。
設問の要件
- 携わった製品の概要
- 企画に至った経緯
- フレームワーク(ファイブフォース分析など)を用いて抽出した3つの脅威
高得点のポイント
- 製品概要の具体性: 単なる「組込みシステムの用途」を記述するだけでなく、製品自体の特徴や市場における位置づけなど、具体的な製品説明が含まれていること。
- 企画経緯の妥当性: デジタルトランスフォーメーション(DX)推進やIoTの普及、あるいは半導体不足といった外部環境の変化を踏まえ、なぜ新市場・新製品への参入が必要になったのかを論理的に説明していること。
- フレームワークの適切な活用: ファイブフォース分析(新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力、既存企業間の敵対関係)などの分析手法を用いて、製品企画における3つの明確な脅威を論理的に抽出できていること。
(2)
設問アで答えた脅威において,そのうち特に重要と考えた二つの脅威についてどのようにフレームワークなどを活用し分析したか,それぞれの脅威に対し関連部門と連携してどのような対策案を検討したか,その対策を講ずる際の課題はどのように解決したか,2ページ(800字相当)以上,かつ,4ページ(1,600字相当)以内で具体的に答えよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
知識・理解度(内容)(18点)
- 18点: 特に重要な2つの脅威についての分析手法、関連部門と連携した対策案、対策時の課題とその解決策が、実践的かつ極めて具体的に記述されている。
- 14点: 2つの脅威の分析、対策案、課題解決策が具体的に記述されている。
- 9点: 分析、対策案、課題解決策のいずれかがやや抽象的であるか、関連部門との連携に関する記述が薄い。
- 4点: 課題解決策に触れていない、あるいは対策案の具体性に著しく欠ける。
- 0点: 題意に沿った記述がない。
説得力(考察)(15点)
- 15点: 分析から対策案、課題解決に至るまでの考察が極めて深く、エンベデッドシステムスペシャリストとしての高度な企画力と実行力が示されている。
- 11点: 分析結果に基づいた対策と課題解決のプロセスが適切で、十分な説得力がある。
- 7点: 対策案や課題解決策の妥当性・説得力が標準的である。
- 3点: 対策案や課題解決策の理由付けが弱く、説得力に欠ける。
- 0点: 考察や説得力が全く見られない。
解説
本設問は、抽出した脅威の中から重要なものを絞り込み、実践的な対策の立案とその実行過程での課題解決能力を問うており、エンベデッドシステムスペシャリストとしての企画力・分析力の核心となる部分です。
設問の要件
- 設問アで答えた脅威のうち、特に重要な2つの脅威に対するフレームワークを活用した分析
- それぞれの脅威に対する関連部門と連携した対策案
- 対策を講ずる際の課題とその解決策
高得点のポイント
- 分析の深掘り: なぜその2つが特に重要であるのかを明らかにし、フレームワークをどのように適用して脅威の深刻度や影響範囲を評価したか説明していること。
- 関連部門との連携: 組込みシステムの開発は多岐にわたるため、ハードウェア部門、ソフトウェア部門、品質保証部門、営業部門など、他部門とどのように協調・連携して対策を検討したかが明記されていること。
- 課題と解決策の提示: 多くの受験者が「対策案」のみで終わってしまいがちですが、対策を実施する過程で発生するハードル(課題)と、それをどのように乗り越えたか(解決策)について具体的に触れていることが高く評価されます。
(3)
設問イで答えた内容について,脅威の分析結果の評価,脅威に対する対策案の評価,課題解決の評価を,1.5ページ(600字相当)以上,かつ,3ページ(1,200字相当)以内で具体的に答えよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
論理性(構造)(18点)
- 18点: 脅威の分析結果、対策案、課題解決の3点すべてについて、設問イの記述を踏まえた的確な評価が極めて構造的かつ論理的に整理されている。
- 14点: 3点すべてについて適切な評価が論理的に記述されている。
- 9点: 評価の対象に一部漏れがあるか、記述間の論理的なつながりがやや弱い。
- 4点: 評価の観点に大きな欠落があるか、単なる設問イの事実の繰り返しに留まっている。
- 0点: 題意に沿った評価が記述されていない。
説得力(考察)(15点)
- 15点: 客観的かつ多角的な視点から評価が行われており、自身の経験に基づく極めて高い説得力がある。
- 11点: 客観的な評価が行われており、十分な説得力がある。
- 7点: 評価の視点がやや主観的になりがちであるが、一定の説得力は保たれている。
- 3点: 評価の根拠が乏しく、振り返りとしての説得力に欠ける。
- 0点: 考察としての評価が行われていない。
解説
本設問は、一連の企画・分析・対策プロセスを振り返り、客観的に評価する能力を求めています。
設問の要件
設問イで記述した内容に対する以下の3点の評価:
- 脅威の分析結果の評価
- 脅威に対する対策案の評価
- 課題解決の評価
高得点のポイント
- 網羅的な振り返り: 上記の3項目すべてについて漏れなく記述すること。
- 客観性と今後の展望: 「当初の企画目的(新市場への参入など)に対して分析や対策がどれほど有効であったか」、あるいは「どのような反省点があり、今後の製品企画にどう活かせるか」といった客観的な評価がなされていること。
- 一貫性の保持: 設問アおよびイで論じた製品概要や脅威、対策案から逸脱せず、自らの経験に基づく説得力のある総括ができていること。