令和3年度 春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問題 問1 インターネットを利用したL2トンネルとLLDPによる構成管理の自動化
テクノロジネットワーク
学習ガイド
中古自動車販売会社のネットワーク更改と運用自動化を扱う問題です。インターネット上に構築したレイヤ2トンネルの特性と、LLDPを用いた機器構成情報の自動収集について問われます。最初に図2と図3からトンネルの論理的な接続状態を把握し、通信経路上の機器の見え方を整理します。さらに、店舗に接続された各機器の構成情報がLLDPからLLDP-MIBに格納され、運用管理サーバに集約されるまでのプロトコルの動きを順を追って確認します。
この記事で押さえる論点
- MACアドレステーブル未学習時のL2スイッチのフラッディング動作を説明できる
- L2 over IPトンネルにおける経路上の機器がtracerouteに応答しない理由を説明できる
- 管理用コントローラの接続先にFQDNを指定することでIPアドレス変更の影響を回避できる仕組みを述べられる
- LLDPを用いた隣接機器情報の収集とSNMPによる一元管理のプロセスを説明できる
出題情報
- 出題
- 2021(R3)春 ネットワークスペシャリスト 午後I 問1
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
省力化のために,ネットワークの設定や運用の自動化を行うことが増えてきている。これは,インターネットの普及によって全国どこでも同質のネットワークが入手しやすくなったことや,システムから直接操作できるAPIを備えたネットワーク機器が増えてきたことが背景にある。
具体的な例として,コントローラによるネットワーク機器の集中管理や,ネットワーク構成管理の自動化がよく行われる。
本問では,システムの全国展開を題材に,自動化する際によく使われるネットワーク,システム,及びプロトコルに関する知識,理解を問う。
問1では,システムの全国展開を題材に,ネットワークの設定や運用の自動化について出題した。全体として,正答率は平均的であった。
問題本文
ネットワーク運用管理の自動化に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
A社は,中堅の中古自動車販売会社であり,東京に本社のほか 10 店舗を構えている。
〔現状の在庫管理システム〕
A社では,在庫管理システムを導入している。本社及び店舗では,社内の全ての在庫情報を把握できる。在庫管理システムは,本社の在庫管理サーバ,DHCPサーバ,DNSサーバ,本社及び店舗に 2 台ずつある在庫管理端末,並びにこれらを接続するレイヤ2スイッチ(以下,L2SWという)から構成される。在庫管理端末は DHCPクライアントである。
本社と店舗との間は,広域イーサネットサービス網(以下,広域イーサ網という)を用いてレイヤ2接続を行っている。L2SWにVLANは設定していない。
本社の在庫管理サーバでは,在庫情報の管理と,在庫管理システム全ての機器の SNMPによる監視を行っている。在庫管理システムで利用する IPアドレスは 192.168.1.0/24であり,各機器には IPアドレスが一つ割り当てられている。
店舗が追加される際には,その都度,情報システム部の社員が現地に出向き,L2SWと在庫管理端末を設置している。店舗の L2SWは,在庫管理サーバから SSHによるリモートログインが可能である。
現状の在庫管理システムの構成を,図1に示す。

図の説明テキスト
ネットワーク構成図。
「本社」の枠内に「DHCPサーバ」「DNSサーバ」「在庫管理サーバ」があり、それぞれ「L2SW」に接続されている。また、2台の「在庫管理端末」も同じ「L2SW」に接続されている。
「店舗」の枠内に「L2SW」があり、2台の「在庫管理端末」が接続されている。「店舗」の枠の右縁には点線があり、他の店舗の存在や省略を示唆している。
本社の「L2SW」と店舗の「L2SW」は、雲の図形で表された「広域イーサ網」を介して接続されている。
A社は,販売エリアの拡大に着手することにした。またこの機会に,新たに顧客サービスとして全ての店舗でフリーWi-Fiを提供することにした。情報システム部の Bさんは上司から,ネットワーク更改について検討するよう指示された。
Bさんが指示を受けたネットワーク更改の要件を次に示す。
- WAN回線は,広域イーサ網からインターネットに変更する。
- 全ての店舗にフリーWi-Fiのアクセスポイント(以下,Wi-Fi APという)を導入する。
- 既存の在庫管理システムの機器は継続利用する。
- フリーWi-Fiやインターネットを経由して社外から在庫管理システムに接続させない。
- 店舗における機器の新設・故障交換作業は,店舗の店員が行えるようにする。
- SNMPによる監視及びSSHによるリモートログインの機能は,在庫管理サーバから分離し,新たに設置する運用管理サーバに担わせる。
〔新ネットワークの設計〕
Bさんは,本社と店舗との接続に,インターネット接続事業者であるC社が提供する法人向けソリューションサービスを利用することを考えた。このサービスでは,インターネット上にL2 over IPトンネルを作成する機能をもつルータ(以下,RTという)を用いる。RTの利用構成を図2に示す。

図の説明テキスト
ネットワークの構成図。
構成要素と接続関係:
・中央に「インターネット」の雲があり、その中に「ISP-C」の円がある。
・インターネットには「RT管理コントローラ」が接続されている。
・左右に「RT」(ルータ)が1つずつ配置されており、それぞれの「EP」ポートがISP-Cに接続されている。
・左側のRTは、「RP」ポートで「機器1」に、「BP」ポートで「機器2」に接続されている。
・右側のRTは、「RP」ポートで「機器3」に、「BP」ポートで「機器4」に接続されている。
・左右のRTの「BP」ポート同士を繋ぐように、ISP-Cをまたいで「L2 over IP トンネル」(点線の四角枠)が形成されている。
凡例と注記:
・[点線の四角枠] : L2 over IP トンネル
・BP : ブリッジポート
・EP : 外部接続ポート
・ISP-C : C社のネットワーク
・RP : ルーティングポート
・注記1 : RP に接続された機器 1,機器 3 は,インターネットと通信する。
・注記2 : BP に接続された機器 2,機器 4 は,閉域網内で通信する。
Bさんが調査した内容を次に示す。
- RTは物理インタフェース(以下,インタフェースをIFという)として,BP,EP,RPをもつ。
- EPは,ISP-CにPPPoE接続を行い,グローバルIPアドレスが一つ割り当てられる。RTには,C社から出荷された時にPPPoEの認証情報があらかじめ設定されている。
- RPに接続した機器は,RTのNAT機能を介してインターネットにアクセスできる。インターネットからRPに接続した機器へのアクセスはできない。
- RPに接続した機器とBPに接続した機器との間の通信はできない。
- RTの設定及び管理は,C社データセンタ上のRT管理コントローラから行う。他の機器からは行うことができない。
- RTがRT管理コントローラと接続するときには,RTのクライアント証明書を利用する。
- RT管理コントローラは,EPに付与されたIPアドレスに対し,pingによる死活監視及びSNMPによるMIBの取得を行う。
Bさんが考えた,ネットワーク更改後の在庫管理システムの構成を,図3に示す。

図の説明テキスト
ネットワーク更改後の在庫管理システムの構成(抜粋)を示すネットワーク構成図。
構成要素と接続関係は以下の通り:
・インターネット上のISP-Cを中心に各拠点が接続されている。
・C社データセンタ: RT管理コントローラ (controller.isp-c.net) があり、ISP-Cに接続している。
・本社: RT00があり、EPポートでISP-Cに接続、RPポートで運用管理サーバに接続、BPポートでL2SW00に接続している。運用管理サーバはL2SW00にも接続している。L2SW00には、運用管理サーバ、DHCPサーバ、DNSサーバ、在庫管理サーバ、在庫管理端末001、在庫管理端末002が接続している。
・店舗: RT01があり、EPポートでISP-Cに接続(破線の通信経路)、RPポートでWi-Fi APに接続、BPポート(RT01側IF1)でL2SW01に接続している。L2SW01は、IF2ポートで在庫管理端末011(IF1ポート)に、IF3ポートで在庫管理端末012(IF1ポート)に接続している。
注記として以下が記載されている:
・注記1: 網掛け部分は、ネットワーク更改によって追加される箇所を示す。
・注記2: controller.isp-c.net は、RT管理コントローラのFQDNである。
・注記3: IF1, IF2, IF3は、IF名を示す。
本社に設置するRTと店舗に設置するRT間でポイントツーポイントのトンネルを作成し,本社を中心としたスター型接続を行う。店舗のRTのBPは,トンネルで接続された本社のRTのBPと同一ブロードキャストドメインとなる。
Bさんが考えた,新規店舗への機器の導入手順を次に示す。
- 情報システム部は,店舗に設置する機器一式,構成図,手順書及びケーブルを店舗に送付する。そのうちL2SW,Wi-Fi APについては,本社であらかじめ初期設定を済ませておく。
- 店員は,送付された構成図を参照して各機器を接続し,電源を投入する。
- RTは,自動でISP-CにPPPoE接続し,インターネットへの通信が可能な状態になる。
- RTは,RT管理コントローラに,①REST APIを利用してRTのシリアル番号とEPのIPアドレスを送信する。
- RTは,RT管理コントローラが保持する最新のファームウェアバージョン番号を受け取る。
- RTは,RTで動作しているファームウェアバージョンが古い場合は,RT管理コントローラから最新ファームウェアをダウンロードし,更新後に再起動する。
- RTは,RT管理コントローラから本社のRTのIPアドレスを取得する。
- RTは,本社のRTとの間にレイヤ2トンネル接続を確立する。
- 店員は,Wi-Fi AP配下のWi-Fi端末及び②在庫管理端末から通信試験を行う。
- 店員は,作業完了を情報システム部に連絡する。
〔構成管理の自動化〕
Bさんは,③店舗から作業完了の連絡を受けた後で確認を行うために,LLDP (Link Layer Discovery Protocol) を用いてBP配下の接続構成を自動で把握することにした。RT,L2SW及び在庫管理端末は,必要なIFからOSI基本参照モデルの第a層プロトコルであるLLDPによって,隣接機器に自分の機器名やIFの情報を送信する。隣接機器は受信したLLDPの情報を,LLDP-MIBに保持する。
なお,全ての機器でLLDP-MED (LLDP Media Endpoint Discovery) を無効にしている。
運用管理サーバは,L2SWと在庫管理端末からbによってLLDP-MIBを取得して,L2SWと在庫管理端末のポート接続リストを作成する。さらに,運用管理サーバは,cが収集したRTのLLDP-MIBの情報をREST APIを使って取得して,ポート接続リストに加える。
ポート接続リストとは,bで情報を取得する対象の機器(以下,自機器という)のIFと,そこに接続される隣接機器のIFを組みにした表である。ある店舗で想定されるポート接続リストの例を,表1に示す。

図の説明テキスト
| 行番号 | 自機器名 | 自機器の IF 名 | 隣接機器名 | 隣接機器の IF 名 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | RT01 | BP | L2SW01 | IF1 |
| 2 | L2SW01 | IF1 | RT01 | BP |
| 3 | L2SW01 | IF2 | 在庫管理端末 011 | IF1 |
| 4 | L2SW01 | IF3 | 在庫管理端末 012 | IF1 |
| 5 | 在庫管理端末 011 | IF1 | L2SW01 | IF2 |
| 6 | 在庫管理端末 012 | IF1 | L2SW01 | IF3 |
| 注記1 行番号は、設問のために付与したものである。 | ||||
| 注記2 表1中の BP は、ブリッジポートの IF 名である。 |
Bさんは上司にネットワーク更改案を提案し,更改案が採用された。
設問と解答・解説
設問1
〔現状の在庫管理システム〕について,(1)〜(3)に答えよ。
名前解決に用いるサーバのIPアドレスを,在庫管理端末に通知するサーバは何か。図1中の機器名で答えよ。
模範解答
DHCPサーバ
採点基準
- 5点: 「DHCPサーバ」と解答している。大文字小文字、全角半角、空白、長音符(サーバ/サーバー)だけの違いは満点。
- 3点: 「DHCP」だけなど、機器名として不完全だがDHCPを指している。
- 0点: DNSサーバなど、上記以外。
図1の構成において,在庫管理システムのセグメントのIPアドレス数に着目すると,店舗の最大数は計算上幾つになるか。整数で答えよ。
模範解答
82
解説
- 在庫管理システムで利用するネットワークは
192.168.1.0/24であり、ホストに割り当て可能なIPアドレスの総数は 個です(ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスを除く)。 - 本社においてIPアドレスが必要な機器は以下の通りです。
- 本社での合計消費IPアドレス数は 6個 です。
- したがって、店舗側に割り当て可能なIPアドレスの残数は 個となります。
- 1店舗あたりに必要なIPアドレスは以下の通りです。
- L2SW(1台)
- 在庫管理端末(2台)
- 1店舗あたりの消費IPアドレス数は 3個 です。
- 残りのIPアドレスで設置可能な店舗の最大数は、 となります。
- したがって、計算上の店舗の最大数は 82 となります。
各選択肢の解説
本設問は数値解答のため、選択肢はありません。
本社のL2SWのMACアドレステーブルに何も学習されていない場合,在庫管理サーバが監視のために送信したユニキャストのICMP Echo requestは,本社のL2SWでどのように転送されるか。30字以内で述べよ。このとき,監視対象機器に対するIPアドレスとMACアドレスの対応は在庫管理サーバのARPテーブルに保持されているものとする。
模範解答
L2SWの入力ポート以外の全てのポートに転送される。
採点基準
- 2点: フラッディングが行われること(全てのポートへ転送されること)を理解している。
- 1点: 転送されることは理解しているが、対象ポートが不正確。
- 0点: 理解していない。
- 2点: 「入力ポート以外の」「全てのポート」という2つの要素を組み合わせて論理的に説明している。
- 1点: どちらかの要素が欠けている。
- 0点: どちらの要素も欠けている。
解説
- レイヤ2スイッチ(L2SW)は、受信したフレームの送信元MACアドレスを自身のMACアドレステーブルに学習し、宛先MACアドレスを元に転送先ポートを決定します。
- 今回、在庫管理サーバから監視対象機器へ送信されるICMP Echo requestはユニキャスト通信であり、宛先には監視対象機器のMACアドレスが指定されています。
- しかし、本社のL2SWのMACアドレステーブルには何も学習されていない状態です。
- L2SWは、宛先MACアドレスがテーブルに登録されていない(Unknownユニキャスト)場合、フラッディングと呼ばれる動作を行います。
- フラッディングとは、受信したフレームを入力ポート以外の全てのポートへ転送する処理のことです。
高得点のポイント
- L2SWのMACアドレステーブルに宛先情報がない場合の挙動(フラッディング)を理解していること。
- フレームが「入力ポート以外の」「全てのポートに転送される」という2つの要素を組み合わせて論理的に記述すること。
- 指定された30字以内の文字数制限を遵守すること。
設問1(3)の正答率は平均的であった。レイヤ2スイッチでフラッディングが生じる条件は基本的な知識なので,よく理解してほしい。
設問2
〔新ネットワークの設計〕について,(1)〜(4)に答えよ。
C社がRTを出荷するとき,RTにRT管理コントローラをIPアドレスではなくFQDNで記述する利点は何か。50字以内で述べよ。
模範解答
RT管理コントローラのIPアドレスが変更された場合でもRTの設定変更が不要である。
採点基準
- 2点: IPアドレス変更の影響を受けないという技術的利点を正しく理解している。
- 1点: FQDNの一般的な利点にとどまる。
- 0点: 理解していない。
- 2点: 前提(IP変更時)と結論(RTの設定変更不要)を論理的に繋いで記述している。
- 1点: 前提または結論の記述が不十分。
- 0点: 論理的な記述になっていない。
解説
- RT管理コントローラはインターネット上に配置されており、C社によって管理されています(図2、図3参照)。
- もしRTに設定するRT管理コントローラの接続先をIPアドレスで直接記述していた場合、C社の都合でサーバ移転やネットワーク構成変更などによりIPアドレスが変更されると、全国の店舗に設置されたすべてのRTで設定変更作業が必要になってしまいます。
- 一方、接続先をFQDN(
controller.isp-c.netなど)で記述しておけば、IPアドレスの変更が生じてもDNSサーバ側でAレコードを更新するだけで済みます。 - したがって、RT管理コントローラのIPアドレスが変更された場合でも、RT側の設定変更が不要になるという運用上の大きな利点があります。
高得点のポイント
- FQDN(ドメイン名)を利用することで、IPアドレスの変更にDNSの更新のみで対応できる仕組みを理解していること。
- コントローラ側のIPアドレス変更という事象と、RT側の設定変更が不要になるという結果を因果関係として明確に記述すること。
- 指定された50字以内の文字数制限を遵守すること。
本文中の下線①について,RTがRT管理コントローラに登録する際に用いる,OSI基本参照モデルでアプリケーション層に属するプロトコルを答えよ。
模範解答
HTTP
HTTPS
採点基準
- 3点: 正しくHTTPまたはHTTPSを挙げている。
- 1点: アプリケーション層プロトコルを挙げているが、REST APIと無関係。
- 0点: 不正解。
- 2点: 要求されたプロトコル名を明確に記述している。
- 1点: 記述が不明確である。
- 0点: 記述が成立していない。
解説
- 下線①では、「REST APIを利用してRTのシリアル番号とEPのIPアドレスを送信する」と記述されています。
- REST (Representational State Transfer) アーキテクチャスタイルに基づくAPIは、一般的にWeb技術を利用して実装されます。
- OSI基本参照モデルのアプリケーション層に属するプロトコルの中で、Web技術においてクライアントとサーバ間のデータ送受信を担うのは HTTP (Hypertext Transfer Protocol) またはその暗号化通信版である HTTPS です。
高得点のポイント
- REST APIの通信基盤として利用されるアプリケーション層プロトコルがHTTP/HTTPSであることを理解していること。
- 問われているプロトコル名を過不足なく明確に記述すること。
本文中の下線②について,店舗の在庫管理端末から運用管理サーバにtracerouteコマンドを実行すると,どの機器のIPアドレスが表示されるか。図3中の機器名で全て答えよ。
模範解答
運用管理サーバ
採点基準
- 5点: 「運用管理サーバ」と答えている。長音符(サーバ/サーバー)、空白、全角半角の違いだけなら満点。
- 3点: 運用管理サーバに加えて、RT01・RT00・L2SWなどの機器も挙げている。
- 0点: 運用管理サーバを含まない。
解説
tracerouteコマンドは、パケットのTTL(生存時間)を1ずつ増やしながら送信し、経路上でTTL切れを返答してきたルータ(レイヤ3機器)のIPアドレスを順に表示することで、宛先までの経路を調査するコマンドです。最終的には宛先機器自身からの応答が表示されます。- 店舗の在庫管理端末から運用管理サーバまでの通信経路(図3)を確認します。
- 店舗の在庫管理端末から店舗L2SW01を経由して、RT01のBP(ブリッジポート)に入ります。
- RT01のBPと本社RT00のBP間は、ISP-Cをまたぐ「L2 over IPトンネル」で接続されています。
- トンネルを抜けたパケットは、本社L2SW00を経由して、運用管理サーバのBP側接続インターフェースに到達します。
- この経路上の機器(L2SW01、L2 over IPトンネル、L2SW00)はすべてレイヤ2の転送を行うため、ルーティング(レイヤ3の処理)は行われず、パケットのTTLは減算されません。
- したがって、店舗の在庫管理端末から運用管理サーバまでは同一のサブネット(同一ブロードキャストドメイン)として直接通信が行われます。
- 途中にルータが存在しないため、tracerouteの結果として表示されるのは最終的な宛先である 運用管理サーバ のIPアドレスのみとなります。
高得点のポイント
- L2 over IPトンネルやL2SWを通る通信ではルーティングが行われず、TTLが減算されないことを理解していること。
- 同一セグメント内の通信となるため、表示されるのは宛先のみであることを導出し、図中の正しい機器名である「運用管理サーバ」を抜き出すこと。
図3において,全店舗のWi-Fi APから送られてくるログを受信するサーバを追加で設置する場合に,本社には設置することができないのはなぜか。ネットワーク設計の観点から,30字以内で述べよ。
模範解答
店舗から本社にはBP経由でしかアクセスができないから
採点基準
- 2点: 店舗から本社へ届く経路がBP(L2 over IPトンネル)しかなく、RP配下のWi-Fi APはその経路を使えないことを理解している。理由として、RP–BP間は通信できないこと、またはインターネットから本社RT00のRP配下へアクセスできないことのいずれかを挙げている。
- 1点: 通信できないとは述べているが、理由が不正確。
- 0点: それ以外。
- 2点: 店舗から本社への到達経路がBPに限られることを理由として述べている。
- 1点: 理由の構成が不十分。
- 0点: 論理的な記述になっていない。
解説
- 店舗のWi-Fi APは、店舗RT(RT01)の RP(ルーティングポート) に接続されています(図3参照)。
- ログを受信するサーバを本社に設置する場合、本社のどこに設置するかで2通りの経路が考えられます。
- 1つ目は本社のBP側(L2SW00など)に設置する場合ですが、Bさんが調査したRTの仕様において「RPに接続した機器とBPに接続した機器との間の通信はできない」と明記されており、店舗のRP配下からBP配下へは通信できません。
- 2つ目は本社のRP側(運用管理サーバなどと同様にRT00のRP配下)に設置する場合ですが、同じく仕様により「インターネットからRPに接続した機器へのアクセスはできない」ため、店舗からインターネット経由でアクセスすることができません。
- どちらにしても届かないため、店舗から本社へはBP経由(L2 over IPトンネル)でしか到達できないという結論になります。
- したがって、ログを受信するサーバを本社に設置することはネットワーク設計上不可能です。
高得点のポイント
- RTの仕様において、RP(インターネット通信用)とBP(閉域網用)間の通信が遮断されていること、またはインターネットからRP配下へアクセスできないことを理解していること。
- 店舗から本社へのアクセスがBP経由に限られるという理由を論理的に記述すること。
- 指定された30字以内の文字数制限を遵守すること。
設問2(3)は,正答率が低かった。tracerouteコマンドはトラブルシュートの場面でよく用いられるものなので,動作原理を理解してほしい。
設問3
〔構成管理の自動化〕について,(1)〜(4)に答えよ。
模範解答
SNMP
RT管理コントローラ
採点基準
- 5点: 空欄bに「SNMP」、空欄cに「RT管理コントローラ」と正確に解答している。大文字小文字、全角半角、空白、長音符(コントローラ/コントローラー)だけの違いは正解として扱う。
- 3点: どちらか一方のみ正解している。
- 0点: 両方とも不正解。
解説
- 【空欄b】運用管理サーバは、「L2SWと在庫管理端末から(空欄b)によってLLDP-MIBを取得して」とあります。ネットワーク機器からMIB(Management Information Base)情報を取得するために一般的に用いられる標準プロトコルは SNMP (Simple Network Management Protocol) です。
- 【空欄c】運用管理サーバは、「(空欄c)が収集したRTのLLDP-MIBの情報をREST APIを使って取得して」とあります。図3や本文の調査内容「RT管理コントローラは、EPに付与されたIPアドレスに対し、pingによる死活監視及びSNMPによるMIBの取得を行う」という記述から、RTのMIBを収集している機器は RT管理コントローラ であることがわかります。
高得点のポイント
- MIB情報の収集に用いられるプロトコルがSNMPであることを理解し、正しく抜き出すこと。
- 本文中の記述からRTのMIBを収集している主体を読み取り、「RT管理コントローラ」を正確に抜き出すこと。
本文中の下線③について,情報システム部は,何がどのような状態であるという確認を行うか。25字以内で述べよ。ただし,機器などの物品は事前に検品され,初期不良や故障はないものとする。
模範解答
各機器の接続構成が構成図どおりであること
採点基準
- 2点: 実際の接続構成が、事前の想定(構成図)と一致しているかを確かめるという目的を理解している。
- 1点: 接続されていること自体の確認にとどまる。
- 0点: 理解していない。
- 2点: 「各機器の接続構成が」「構成図どおりであること」のように、対象と状態を明確に記述している。
- 1点: 対象か状態の記述が不明確。
- 0点: 記述が成立していない。
解説
- 情報システム部は、新規店舗の開設にあたり、機器一式と「構成図」「手順書」「ケーブル」を店舗に送付し、店舗の店員がそれに従って各機器を接続します。
- 作業完了の連絡を受けた後、情報システム部はLLDPを用いて収集された「ポート接続リスト」を確認します。
- 機器に初期不良や故障がない前提において、この確認作業の目的は、店員が行った物理的なケーブル接続が正しく行われているか、つまり事前の設計図(構成図)と実際の接続状態が一致しているかをチェックすることです。
- したがって、「各機器の接続構成が構成図どおりであること」などを確認することになります。
高得点のポイント
- LLDPを用いて作成されるポート接続リストが、物理的な接続状態を可視化するものであると理解していること。
- 確認の目的が「接続されていること」ではなく、「想定された構成図通りになっていること」の検証であることを論理的に記述すること。
- 指定された25字以内の文字数制限を遵守すること。
図3において,情報システム部の管理外のL2SW機器(以下,L2SW-Xという)がL2SW01のIF2と在庫管理端末011のIF1の間に接続されたとき,表1はどのようになるか。適切なものを解答群の中から三つ選び,記号で答えよ。ここで,L2SW-XはLLDPが有効になっているが,管理用IPアドレスは情報システム部で把握していないものとする。また,接続の前後で行番号の順序に変更はないものとする。
模範解答
選択肢イ: 行番号3の隣接機器名が変更される。
選択肢エ: 行番号5の隣接機器名が変更される。
選択肢カ: 隣接機器名L2SW-Xの行が存在する。
解説
- 表1の元の状態では、L2SW01のIF2(行番号3)と在庫管理端末011のIF1(行番号5)が直接接続されており、互いを隣接機器として認識しています。
- ここに、情報システム部の管理外である「L2SW-X」が割り込んで接続された場合を考えます(構成:
L2SW01(IF2) - L2SW-X - 在庫管理端末011(IF1))。 - 管理外のL2SW-Xは運用管理サーバのIPアドレス管理対象外であるため、サーバからSNMPでL2SW-Xへ問い合わせてMIBを取得することはできません。したがって、表1の「自機器名」としてL2SW-Xが記載される行が新規に作られることはありません(オ は誤り)。
- 一方、L2SW-XはLLDPが有効であるため、隣接するL2SW01および在庫管理端末011に対してLLDPフレームを送信します。
- これを受信したL2SW01(IF2)は、隣接機器が「在庫管理端末011」から「L2SW-X」に変わったと認識します。したがって、行番号3の隣接機器名は更新(変更)されます(イ が正しく、ア は誤り)。
- 同様に、LLDPを受信した在庫管理端末011(IF1)も、隣接機器が「L2SW01」から「L2SW-X」に変わったと認識します。したがって、行番号5の隣接機器名も更新(変更)されます(エ が正しく、ウ は誤り)。
- この結果、行番号3や5のように「隣接機器名」の列に「L2SW-X」と記載される行が存在することになります(カ が正しい)。
- 以上より、適切なものは イ、エ、カ となります。
各選択肢の解説
- ア: 隣接機器が別の機器(L2SW-X)に置き換わるだけで接続自体は存在するため、行は削除されません。
- イ(正解): L2SW01のIF2の隣接機器が、在庫管理端末011からL2SW-Xに変わるため、隣接機器名が変更されます。
- ウ: 隣接機器が置き換わるだけでリンク自体は存在するため、行は削除されません。
- エ(正解): 在庫管理端末011のIF1の隣接機器が、L2SW01からL2SW-Xに変わるため、隣接機器名が変更されます。
- オ: 運用管理サーバはL2SW-Xから情報を取得できないため、「自機器名」としてL2SW-Xが登場する行は作成されません。
- カ(正解): L2SW01や在庫管理端末011がL2SW-XからLLDPを受信して保持するため、隣接機器名としてL2SW-Xが記載される行が存在します。
設問3(3)は,正答率が高かった。LLDPを用いた確認であることを読み落とした解答が散見された。本文中に示された条件をきちんと読み取り,正答を導き出してほしい。