令和7年度 秋期 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後II 問2 組込み製品の流用設計(論文)

テクノロジ組込み・IoTシステム開発技術

この問題は2025(R7)秋 エンベデッドシステムスペシャリスト 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。

学習ガイド

既存製品の設計資産を流用して新製品を開発する「流用設計」を論じるエンベデッドシステムスペシャリストの論述問題です。解答例は公表されないので、講評から評価の分水嶺を読み取ります。指摘されたのは、具体的な製品の技術的特徴がない一般論と、設問が明示的に要求する設計書作成の工夫を落とす答案です。流用の目的、流用ゆえの課題(前提差異・制約継承)、そして設計書での対処を対応させて書く構成を解説します。

この記事で押さえる論点

  • 流用設計の目的(基幹技術活用・納期短縮など)と採用理由を明確化する
  • 流用で生じた課題と対策、設計書作成の工夫を具体化する
  • 流用設計の適否を振り返り評価する

問題本文

組込みシステム製品の設計においては,全て新規で設計する場合もあるが,既存製品のアーキテクチャなどの設計資産の流用によって行われる流用設計もある。流用設計の目的は,製品企画部門からの自社基幹技術の活用,納期短縮などの要求の実現,又は設計開発部門からの開発工数削減,技術的改善などの要求の実現である。

製品設計においては,流用設計すべきか,新規設計すべきかを判断することが重要である。例えば,基幹技術活用については,要件定義書などを分析する。また技術的改善の要求については,実施する改善内容の効果を部門内で協議する。これらの分析や協議の内容を基に判断することが重要である。

要求を満たすために流用設計を行った例を次に示す。

  1. 基幹技術活用,納期短縮
  • 基幹技術活用に加え 5G の通信機能の追加に伴い,ソフトウェアについては実績のある通信プロトコルスタックの設計資産を流用する。
  • CPU の性能向上によって,ハードウェアで実施されていた一部の信号処理は,実績のあるソフトウェアを流用することで納期短縮及び部品の削減を図る。
  • 新市場への参入時に,標準規格準拠,法令遵守を新規設計で対応するのはリスクがある。そのため実績のあるミドルウェアなどの設計資産を流用する。
  1. 開発工数削減,技術的改善
  • 既存製品のアーキテクチャ,タスク構造設計,共有メモリ仕様,データベース仕様などを流用して設計することによって開発工数削減を図る。
  • 既存製品のライブラリ化されたプログラム,デバイスドライバなどを流用して設計することによって開発工数削減を図る。
  • 既存製品の技術的改善としてオープンソースの AI 設計資産を流用することによって,既存製品と比較して画像認識率を高めた製品を実現する。

一方,流用設計には,例えば,流用元である既存の設計資産などの詳細な設計書が不明確,既存製品にあった機能の仕様が不明確なため後継製品に搭載できない,技術的サポートが受けられないなどの課題がある。そのため,流用設計の課題に対して講じられた対応策も含めた適切な設計書を作成することが重要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って解答せよ。

なお,解答欄には,文章に加えて,図・表を記載してもよい。

設問と解答・解説

設問ア

あなたが携わった組込みシステム製品の用途及び技術的特徴を踏まえた概要,あなたが設計を担当したハードウェア・ソフトウェアの内容,流用設計の目的について,1ページ(400字相当)以上,かつ,2ページ(800字相当)以内で答えよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 組込みシステム製品の用途及び技術的特徴、ハードウェア・ソフトウェアの内容、流用設計の目的が、エンベデッドシステムスペシャリストの視点から非常に具体的に論述されている。
  • 11: 上記内容が記述されているが、技術的特徴や流用設計の目的に関する具体性がやや不足している。
  • 5: 一般論にとどまり、具体的な製品の技術的特徴やハードウェア・ソフトウェアの内容が不明確である。
  • 0: 記述がないか、全く無関係である。

論理性(構造)(16点)

  • 16: 製品の概要から担当した設計内容、そして流用設計の目的へと至る論理展開が明確であり、整合性が取れている。
  • 10: 論理展開は概ね妥当であるが、一部の文脈の繋がりにやや不自然な点がある。
  • 5: 各要素の関連性が薄く、論理展開が不明瞭である。
  • 0: 全く論理的でない。

解説

設問の意図と構成

本問は、エンベデッドシステムスペシャリストとして、既存製品のモジュールやアーキテクチャの流用設計における分析・設計能力を問う論述問題です。設問アでは、その前提となる対象製品の概要、自身の担当範囲、そして流用設計の目的を明確にすることが求められます。

高得点のポイント

  • 製品の技術的特徴の具体化: 一般論にとどまらず、携わった組込みシステム製品の具体的な用途と技術的特徴を明記する。

  • 担当範囲の明確化: 自身が設計を担当したハードウェアおよびソフトウェアの内容を具体的に説明する。

  • 流用設計の目的の提示: 単なるコスト削減や工期短縮といった一般的な理由だけでなく、対象製品の技術的背景を踏まえた流用設計の目的を論理的に説明する。

設問イ

設問アで答えた目的について分析や協議をした内容,流用設計を採用した理由とその内容,その結果生じた課題及び対応策,設計書を作成するに当たり工夫した内容を2ページ(800字相当)以上,かつ,4ページ(1,600字相当)以内で具体的に答えよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 分析や協議の内容、流用設計の採用理由とその内容、生じた課題と対応策、設計書作成の工夫が、具体的な技術的背景とともに詳細に述べられている。
  • 11: 上記内容が記述されているが、一部(特に設計書に関する記述など)が一般論にとどまっている。
  • 5: 課題や対応策、設計書の工夫の記述が浅く、具体的な技術的特徴が読み取れない。
  • 0: 記述がないか、全く無関係である。

説得力(考察)(16点)

  • 16: 流用設計を採用した理由や、生じた課題に対する対応策、設計書作成の工夫の理由が、エンベデッドシステムスペシャリストとして非常に説得力をもって論じられている。
  • 10: 理由は述べられているが、技術的な観点からの説得力がやや弱い。
  • 5: 理由や工夫の根拠が乏しく、説得力に欠ける。
  • 0: 全く説得力がない。

解説

設問の意図と構成

設問イでは、設問アで提示した目的に対して、どのような分析や協議を行い、なぜ流用設計を採用したのか、その具体的な内容を展開します。さらに、実践する上で生じた課題とその対応策、および設計書の作成における工夫を論述することが求められます。

高得点のポイント

  • 分析と採用理由の整合性: 設問アで掲げた目的と、実際に行った分析・協議内容、流用設計を採用した理由の間に強い論理的な繋がりを持たせる。

  • 課題と対応策の具体性: 流用設計ならではの技術的な課題(インターフェースの不整合、リソースの制約、リアルタイム性の確保など)を挙げ、それに対する実践的な対応策を具体的に記述する。

  • 設計書の工夫の記述: 講評で指摘されている通り、設計書に関して記述されていない論述は大幅な減点対象となります。流用部分と新規部分の切り分けや、他の開発者が理解しやすいような設計書の工夫を必ず盛り込む。

設問ウ

設問イで答えた流用設計の評価,課題対応策の評価,設計書を作成するに当たり工夫した内容の評価について,1.5ページ(600字相当)以上,かつ,3ページ(1,200字相当)以内で具体的に答えよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 34点)

論理性(構造)(17点)

  • 17: 設問イで挙げた流用設計、課題対応策、設計書作成の工夫に対する評価が、論理的かつ一貫して述べられている。
  • 11: 評価の論理展開は概ね妥当であるが、一部の記述に飛躍や設問イとの不整合がみられる。
  • 5: 評価の根拠が不明瞭であり、設問イの内容との関連性が薄い。
  • 0: 論理展開が成立していない。

説得力(考察)(17点)

  • 17: 流用が適切であったかの振り返りを含め、評価が客観的かつ深い洞察に基づいており、専門家としての説得力が極めて高い。
  • 11: 評価は行われているが、客観的な振り返りや専門的な洞察がやや不足している。
  • 5: 評価が主観的・表面的であり、説得力に乏しい。
  • 0: 全く説得力がない。

解説

設問の意図と構成

設問ウでは、設問イで実施した対応策や工夫について、最終的な評価振り返りを行います。エンベデッドシステムスペシャリストとして、流用設計が結果として適切であったか、目的を達成できたかを客観的に評価する能力が問われます。

高得点のポイント

  • 一貫性のある評価: 設問イで挙げた「流用設計」「課題対応策」「設計書作成の工夫」の3点それぞれに対する評価を漏れなく記述する。

  • 客観的な指標を用いた振り返り: 品質、コスト、納期の観点や、保守性・拡張性の向上といった客観的な指標を用いて評価を行う。

  • 専門家としての洞察: 単にうまくいったで終わらせず、流用設計が適切であったかどうかの専門的な振り返りを記述し、今後の開発にどう活かすかという洞察を含めると説得力が増す。