令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午後I問題 問1 コンタクトセンタのマルチチャネル化と業務効率化に向けたシステム再構築
ストラテジシステム戦略・企画
学習ガイド
ECサイトや実店舗を展開する販売企業が、コンタクトセンタの機能刷新と新チャネル導入を図る事例です。クラウド型PBXの導入目的、AIボットと有人チャットの役割分担、FAQの随時更新による負荷軽減策が問われます。解く際は、表1の顧客行動と表2に挙げられた業務課題を照合し、運用方針の記述からチャネルごとの対応条件や他部門連携の狙いを順に読み取ることがポイントです。
この記事で押さえる論点
- クラウド型PBX導入による在宅勤務の実現と拠点障害への耐性向上を説明できる
- AIボットと有人対応の使い分け方針および時間外運用の制約を述べられる
- 有人チャット専任化による1対複数人対応の効率化効果を説明できる
- FAQの随時更新やキーワード分析が他部門や問合せ抑制に与える効果を述べられる
出題情報
- 出題
- 2022(R4)春 システムアーキテクト 午後I 問1
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
近年,企業のカスタマサービスでは,CX(カスタマエクスペリエンス)向上のために,様々なチャネルからの問合せを可能としている。一方で,コンタクトセンタには限られた人員で効率的に問合せ対応するための工夫も求められており,システムアーキテクトは,様々なデジタル技術を活用してサービス設計を行う必要がある。本問では,個人向け商品の製造及び販売を行っている企業における新たなコンタクトセンタシステムの構築を題材として,関係者の要求や運用上の制約などを考慮し,必要な機能設計,運用設計を行う能力を問う。
問1では,新たなコンタクトセンタの構築を題材に,サービス設計,運用設計について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
問1 新たなコンタクトセンタシステムの構築に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。
A社は,化粧品,健康食品などの個人向け商品の製造及び販売を行っている。商品は,薬局,コンビニエンスストアなどの実店舗及び主要なECサイトのほか,A社直営のオンラインストアでも販売を行っている。近年は,オンラインストア経由での販売を伸ばすために,オンラインストアの会員へのポイント付与,各種キャンペーンの実施などに力を入れている。
〔カスタマサービスの現状〕
A社では現在,顧客向けのカスタマサービスとして,電話及びWebフォームからの問合せを受け付けている。
電話での問合せについては,顧客が問合せ窓口のフリーダイヤルに電話すると,自動音声応答(以下,IVRという)で問合せ内容を識別し,内容に応じて,国内3拠点にあるA社のコンタクトセンタに振り分けられる。各コンタクトセンタでは,数十名のオペレータが対応しており,IVR経由で着信した電話は,コンタクトセンタ内にある構内交換機(以下,PBXという)でオペレータの座席に設置されている電話機に分配され,つながる仕組みになっている。
また,Webフォームから受け付けた問合せについても,Webフォーム上で問合せ内容の分類を選択してもらうことで,電話での問合せと同様に内容に応じて,各コンタクトセンタに振り分けられる。Webフォームからの問合せについては,各コンタクトセンタに電話対応とは別の対応チームを設置しており,管理者がオペレータの中から担当者を割り当て,その担当者が回答テンプレートを参考に返信メールを作成し,顧客に回答している。
電話及びWebフォームからの問合せ及び回答内容については,顧客管理システム上に登録して管理している。
また,A社では,四半期に一度,問合せ内容の統計をとり,分析して,よくある問合せ内容について,A社のWebサイト上に,FAQとして掲載し,情報発信している。電話及びWebフォームからの問合せ内容は,顧客の行動に応じて様々である。よくある問合せ内容及び特徴を表1に示す。

図の説明テキスト
表1 顧客の行動ごとのよくある問合せ内容及び特徴
| 顧客の行動 | よくある問合せ | 問合せ内容の特徴 |
|---|---|---|
| 商品購入前の検討 | ・含まれる成分 ・商品の違い ・顧客状況に応じたお勧め商品 |
体質など顧客ごとに気になる点が異なり,多岐にわたる傾向がある。 |
| 購入方法の情報収集 | ・商品を購入できる店舗情報 ・店舗での新商品の取扱状況 |
店舗情報を参照し,明確に回答できるものが多い。 |
| オンラインストアでの購入 | ・配送料 ・配送方法の変更 ・注文のキャンセル ・返品 |
配送業者との調整など,オンラインストア上で処理できないものが多い。 |
| 購入した商品の使用 | ・使用順序,タイミング ・使用期限 ・保管方法 |
商品ごとに定められた回答ができるものが多い。 |
| 会員情報の確認 | ・パスワード忘れ ・ポイント照会 |
本人確認を行うことで,手続,回答できるものが多い。 |
〔カスタマーサービスの課題〕
A社では,コンタクトセンタで勤務するオペレータ及び管理者並びに商品事業部の社員に対してカスタマーサービスの現状についてヒアリング調査を行い,表2に示す課題を抽出した。

図の説明テキスト
表2 カスタマサービスの課題
| 対象者 | ヒアリングで抽出した課題 |
|---|---|
| コンタクトセンタのオペレータ | (a) 新商品の発売が毎月数回あり、発売時にテレビなどのメディアで取り上げられると、商品購入前の検討、購入方法及びオンラインストアでの購入手続に関する問合せが急増し、対応が大変になる。 (b) オンラインストアの会員限定のセール・キャンペーンが始まると、会員情報に関する問合せが急増し、1件ごとの対応は簡単であるが、1日中電話が鳴りやまない。 (c) 問合せが急増すると、オペレータに電話がつながるまでに長時間待たせることになり、顧客からのクレームにつながっている。 (d) お勧め商品に関する問合せは、顧客の体質、希望などをよく聞き取りをしてから顧客に適した商品を紹介しているので、対応時間が長くなる。 |
| コンタクトセンタの管理者 | (e) 近年は各地域内でコンタクトセンタの設置が増えており、オペレータの人材確保が困難になっている。一方で、育児、介護などで、フルタイムで出社して働くことが難しいオペレータもおり、在宅かつ柔軟な勤務時間で働きたいというニーズが高まっている。 (f) オペレータの出勤のシフト計画は前月に作成していること、また人員の余裕がないことから、問合せ件数の増減に対してオペレータの出勤人数を柔軟に調整できていない。 (g) 新商品の発売時は、当該商品の FAQ が掲載されていないので、電話及び Web フォームからの問合せが急増する。FAQ を見れば分かるような簡単な問合せも多いので、FAQ を早く掲載したい。 (h) 大規模災害時、感染症の拡大時などには、特定のコンタクトセンタを一時的に閉鎖せざるを得ないケースが想定され、その際にカスタマサービスの継続が危ぶまれる。 |
| 商品事業部の社員 | (i) 顧客からの問合せの情報は、コンタクトセンタ内で解決できない内容がエスカレーションされることはあるが、それ以外は特に共有されていない。商品の改善のために、他の情報も有効に活用したい。 (j) 直営のオンラインストアは 24 時間利用できるが、電話の問合せは日中にしか対応していない。オンラインストアで商品購入時に不明点があったり、会員情報にアクセスできなかったりして、注文途中の離脱が多く、販売機会の損失につながっている。 |
〔新たなコンタクトセンタシステムの構築〕
カスタマサービスの課題を踏まえて,A社では,表3に示すサービス機能を有する新たなコンタクトセンタシステムを構築することにした。
なお,これらの機能はコンタクトセンタのオペレータ及び管理者向けの機能であるが,ナレッジベース及びキーワード分析の機能は,商品事業部の社員も利用できることにした。

図の説明テキスト
表3 新たなコンタクトセンタシステムのサービス機能
| サービス機能 | 機能概要 |
|---|---|
| クラウド型 PBX | オペレータが利用する電話機を PC 上で電話対応できるソフトフォンに変更し, PC からインターネットを経由して電話の発着信, 通話などができるようにする。 |
| コンタクトセンタ間の着信自動分配 | 国内 3 拠点のコンタクトセンタの運用状況及びオペレータの稼働状況を総合的に管理し, 問合せ内容だけでなく, 運用状況及び稼働状況を見ながら適切に電話の振分けを行えるようにする。 |
| オムニチャネル | 現在の電話, Web フォームからの問合せチャネルに加えて, 次に示す複数のチャネルからの問合せを可能とする。有人対応ではないサービスは 24 時間対応可能とする。 |
| AI チャットボット | A 社の Web サイトからチャットを起動し, 顧客からの質問に対して AI が FAQ を参考に自動回答したり, 定型的な手続を実行したりする。AI チャットボットで対応困難な場合, 顧客は有人チャットを起動できる。ただし, オペレータが繁忙の場合は “お待ちください” と表示する。また, ある条件のときは, 有人チャットを起動できない設定にする。 |
| 有人チャット | オペレータが, 顧客からのチャットでの問合せに対して回答する。一人のオペレータが複数のチャットを起動し, 同時に複数の顧客との対応ができるようにする。 |
| ボイスボット | IVR 上で, 顧客が電話で話しかけた内容に対して, AI チャットボットと同様に, AI が音声で自動回答したり, 手続を実行したりする。 |
| ビデオ通話 | ビデオ機能で顔を見たり, 商品を映したりしながらの通話を可能とする。 |
| ナレッジベース | FAQ を容易に作成, 公開でき, FAQ に対する評価結果などから作成・更新が必要な FAQ を把握できるようにする。 |
| コールバック | 電話がつながるまでそのまま待つか, オペレータからの電話の折返しを要求するかを IVR 上で顧客が選択できるようにする。 |
| 自動録音 | IVR 上で通話内容を録音することを案内し, 通話内容を自動で録音し, 顧客管理システム上の対応履歴にひも付けて管理する。 |
| 通話内容の自動テキスト化 | 自動録音した内容を, AI の音声認識技術を使ってテキスト化し, 顧客管理システム上の対応履歴にひも付けて管理する。 |
| キーワード分析 | テキスト化した通話内容からキーワード分析を行い, 商品ごとにどのような問合せ, クレームなどが多いのかを自動で統計をとり, 分析できるようにする。 |
〔コンタクトセンタシステム構築後の運用〕
新たなコンタクトセンタシステムでは,問合せのチャネルが増加するので,次のとおり運用することにした。
- オペレータの勤務時間帯は,従来どおりの日中だけとする。
- ビデオ通話と電話は,通話だけか,映像も交えた対応かという違いだけで,対応処理がほぼ同じであるので,同じ体制で対応する。
- 有人チャットは,会話型のコミュニケーションができる良さがあるものの,突然会話が途切れて反応がなくなるなどの特殊なコミュニケーション手段になる。①効率的に顧客対応を行うために,オペレータをビデオ通話及び電話とは分けて,有人チャット専任の体制とする。
- Webフォームからの問合せ対応は,従来どおりの体制で対応する。
- AIチャットボット及びボイスボットは,将来的に広範囲の問合せに対応できることを目指すが,有効性を評価しながら段階的に対象を増やすことにする。稼働当初は,オペレータの業務を補完する目的で,急増しやすい問合せ,かつそれぞれの機能の特徴で対応できる見込みが高い問合せを対象にする。一方で,新商品購入者の声を直接聞きたい狙いもあり,顧客が使用中の商品に関する問合せは,稼働当初は対象にしない。
- 問合せ内容に応じて,国内3拠点のコンタクトセンタに振り分けるのはこれまでと同じ対応とするが,②状況によっては,問合せを柔軟に振り分けられるようにする。そのための,オペレータに対するトレーニングを行う。
- コンタクトセンタの管理者及び商品事業部の社員がナレッジベースの機能を使い,随時FAQの作成・更新を行い,公開する。また,FAQの情報が足りなかったり,古かったりする場合は,オペレータがFAQの作成・更新の依頼を行うこともできるようにする。
設問と解答・解説
設問1
〔新たなコンタクトセンタシステムの構築〕について,(1)〜(5)に答えよ。
クラウド型PBXを導入した,オペレータの勤務形態の改善に関する目的を25字以内で述べよ。
模範解答
オペレータが在宅でも働けるようにするため
採点基準
- 4点: オペレータが在宅でも働けるようになる(在宅勤務の実現)旨を明記している。
- 2点: 柔軟な勤務場所や多様な働き方の実現には触れているが、「在宅」というキーワードが欠けている。
- 0点: 勤務場所の柔軟性に関する記述がない。
- 3点: 導入の目的として、「〜ようにするため」「〜ため」等の自然で論理的な表現となっている。
- 0点: 目的を示す表現として不自然である。
解説
本問は、クラウド型PBX導入によるオペレータの勤務形態の改善目的を問う問題です。
表2 カスタマサービスの課題 の「コンタクトセンタの管理者」の(e)において、「在宅かつ柔軟な勤務時間で働きたいというニーズが高まっている」という課題が挙げられています。
また、表3 新たなコンタクトセンタシステムのサービス機能 における「クラウド型PBX」の機能概要を見ると、「PCからインターネットを経由して電話の発着信,通話などができるようにする」と記述されています。
これにより、オペレータはコンタクトセンタにフルタイムで出社しなくても、インターネット環境とPCがあれば電話対応が可能となります。したがって、クラウド型PBXを導入した勤務形態改善の目的は、オペレータが在宅でも働けるようにすることです。
高得点のポイント
- オペレータが在宅勤務可能になるという核心部分に触れていること
- 改善の目的として「〜ため」などの適切な文末でまとめられていること
AIチャットボット及びボイスボットでは,稼働当初はどのような問合せに対応することを想定しているか。問合せ時の顧客の行動を表1中から全て答えよ。
模範解答
購入方法の情報収集,会員情報の確認
採点基準
- 9点: 「購入方法の情報収集」と「会員情報の確認」の両方を解答している。
- 4点: 「購入方法の情報収集」または「会員情報の確認」のいずれか一方のみを解答している。
- 0点: 上記いずれの正解も含まれていない。
解説
本問は、AIチャットボット及びボイスボットで稼働当初に対応を想定している問合せの顧客行動を、表1から抽出する問題です。
〔コンタクトセンタシステム構築後の運用〕 において、AIチャットボット及びボイスボットの稼働当初の対象範囲は以下の条件を満たすものとされています。
- 急増しやすい問合せであること
- それぞれの機能の特徴で対応できる見込みが高い問合せであること
- 顧客が使用中の商品に関する問合せは対象にしない
これを踏まえて、表1 の各行動を検証します。
- 商品購入前の検討:問合せ内容の特徴として「体質など顧客ごとに気になる点が異なり,多岐にわたる傾向がある」ため、定型的な自動対応が難しく、2の条件を満たしません。
- 購入方法の情報収集:「店舗情報を参照し,明確に回答できるものが多い」ため、自動回答に適しており、2の条件を満たします。また、表2の(a)より問合せが急増しやすい対象(1の条件)でもあります。
- オンラインストアでの購入:「配送業者との調整など,オンラインストア上で処理できないものが多い」ため、2の条件を満たしません。
- 購入した商品の使用:「商品ごとに定められた回答ができるものが多い」ですが、運用ルールにおける3の条件(使用中の商品に関する問合せは対象外)により除外されます。
- 会員情報の確認:「本人確認を行うことで,手続,回答できるものが多い」ため、自動回答に適しており、2の条件を満たします。表2の(b)より問合せが急増しやすい対象(1の条件)でもあります。
したがって、「購入方法の情報収集」と「会員情報の確認」の2つが対象となります。
高得点のポイント
- 本文の運用ルール(急増しやすい、自動対応可能、使用中は対象外)を漏れなく適用して選択肢を絞り込めていること
ある条件のときは,AIチャットボットから有人チャットを起動できない設定にしているが,それはどのような条件のときか。コンタクトセンタの運用を踏まえて,20字以内で述べよ。
模範解答
オペレータの勤務時間帯以外のとき
採点基準
- 4点: オペレータの勤務時間帯以外(夜間等、オペレータが不在の時間)であることを明記している。
- 2点: オペレータの不在には触れているが、「勤務時間」等の具体的な運用上の制約に触れていない。
- 0点: オペレータの不在や時間外に関する記述がない。
- 3点: 条件として「〜とき」「〜時間帯」等の適切な形式で記述されている。
- 0点: 条件を示す表現として不自然である。
解説
本問は、AIチャットボットから有人チャットを起動できない設定にする条件をコンタクトセンタの運用を踏まえて解答する問題です。
表3 新たなコンタクトセンタシステムのサービス機能 のオムニチャネル機能において、「有人対応ではないサービスは24時間対応可能とする」と規定されています。AIチャットボットは自動応答であるため24時間稼働しています。
一方で、〔コンタクトセンタシステム構築後の運用〕 のルールとして、「オペレータの勤務時間帯は,従来どおりの日中だけとする」と明記されています。
有人チャットはオペレータが直接対応するサービスです。したがって、オペレータが不在となる時間帯(日中以外の時間帯)には、有人チャットでの対応を行うことができません。
このことから、AIチャットボットから有人チャットを起動できない設定とする条件は「オペレータの勤務時間帯以外のとき」となります。
高得点のポイント
- オペレータの勤務時間帯が日中のみに限定されていることに着目すること
- 勤務時間外には有人対応が不可能である事実を簡潔に表現すること
電話のコールバックの仕組みを導入して解決を図る直接的な課題を表2中の(a)〜(j)の記号で一つ答えよ。
模範解答
選択肢c: 問合せが急増すると,オペレータに電話がつながるまでに長時間待たせることになり,顧客からのクレームにつながっている。
解説
本問は、電話のコールバックの仕組みが直接解決する課題を選択する問題です。
表3 新たなコンタクトセンタシステムのサービス機能 の「コールバック」機能概要には、「電話がつながるまでそのまま待つか,オペレータからの電話の折返しを要求するかをIVR上で顧客が選択できるようにする」と記述されています。
この機能は、顧客が長時間電話をつないだまま待たされる状況を回避するためのものです。
表2 カスタマサービスの課題 の(c)には、「問合せが急増すると、オペレータに電話がつながるまでに長時間待たせることになり、顧客からのクレームにつながっている。」とあり、これがコールバック機能によって直接解決が図られる課題に該当します。
各選択肢の解説
- a: 期間限定の問合せ急増に関する課題であり、AIチャットボット等の導入やFAQの公開などで解決を図るものです。
- b: 会員情報に関する問合せの急増に関する課題であり、AIチャットボットやボイスボットの導入で解決を図るものです。
- c: 正解。顧客の待ち時間解消とクレーム防止に直結する課題であり、コールバック機能の目的と一致します。
- d: 対応時間が長くなる課題は、キーワード分析やナレッジベースなどを通じた対応品質の向上等に関連します。
- e: オペレータの勤務形態・採用に関する課題であり、クラウド型PBXの導入で在宅勤務を可能にすることで解決を図るものです。
- f: シフトの調整困難に関する課題であり、コンタクトセンタ間の着信自動分配等で解決を図るものです。
- g: FAQ未掲載による問合せ急増の課題であり、ナレッジベース機能でFAQを随時作成・公開できるようにすることで解決を図るものです。
- h: 拠点閉鎖による事業継続性の課題であり、コンタクトセンタ間の着信自動分配による柔軟な振分けで解決を図るものです。
- i: 問合せ情報の活用不足に関する課題であり、キーワード分析の機能を商品事業部の社員に利用させることで解決を図るものです。
- j: 24時間対応の不備による販売機会損失の課題であり、オムニチャネル(AIチャットボット等)の24時間対応で解決を図るものです。
キーワード分析の機能を商品事業部の社員が利用できることにした理由を35字以内で述べよ。
模範解答
商品の問合せ,クレーム内容などを商品の改善につなげたいから
採点基準
- 4点: 商品の問合せやクレーム情報を、商品の改善に活用・反映させたい旨を明記している。
- 2点: 「商品の改善」について記述しているが、具体的な分析対象(問合せやクレーム情報)に言及していない。
- 0点: 商品の改善につなげる意図が読み取れない。
- 3点: 理由として「〜ため」「〜から」等の適切な表現となっている。
- 0点: 理由を示す表現として不自然である。
解説
本問は、商品事業部の社員に「キーワード分析」の機能を利用させる理由を解答する問題です。
表2 カスタマサービスの課題 の商品事業部の社員におけるヒアリング結果(i)において、「顧客からの問合せの情報は...共有されていない。商品の改善のために,他の情報も有効に活用したい。」という課題が挙げられています。
一方、表3 新たなコンタクトセンタシステムのサービス機能 の「キーワード分析」の機能概要には、「テキスト化した通話内容からキーワード分析を行い,商品ごとにどのような問合せ,クレームなどが多いのかを自動で統計をとり,分析できるようにする」とあります。
つまり、キーワード分析機能を利用することで、通話内容から得られた問合せやクレームの情報を分析し、それを自部門の目標である「商品の改善」につなげることができるため、商品事業部の社員にも利用させることにしたと分かります。
高得点のポイント
- 通話内容等から得られる問合せやクレーム内容の情報を活用するという点に触れていること
- 活用する最終的な目的が「商品の改善」であることを明記していること
設問1(2)は,正答率が低かった。AIチャットボット及びボイスボットで対応可能な問合せ内容を,表1の内容を読んだだけで選択し,“購入した商品の使用”を解答に含めていた受験者が多かった。本文中に記載されている稼働当初の対象範囲をよく読み,サービス導入の方針をよく理解して,正答を導き出してほしい。設問1(5)は,正答率は平均的であったが,単に表3のキーワード分析の機能概要に記載された内容だけを解答するものが散見された。商品事業部の社員が利用できることにした理由を問うているので,機能でできることだけでなく,何の目的に機能を利用させるのかを理解した上で解答してほしい。
設問2
〔コンタクトセンタシステム構築後の運用〕について,(1)~(3)に答えよ。
本文中の下線①で想定する効率的な顧客対応とは具体的にどのようなものか。25字以内で述べよ。
模範解答
一人のオペレータが同時に複数の顧客と対応する
採点基準
- 3点: 一人のオペレータが同時に複数の顧客と対応可能である点に明確に言及している。
- 1点: 複数顧客への対応には触れているが、「同時に」「一人のオペレータが」などの要素が欠けている。
- 0点: 同時対応についての記述がない。
- 2点: 効率的な顧客対応の内容として意味が通る形で記述されている。
- 0点: 意味が通らない、または表現が不自然である。
解説
本問は、有人チャット専任体制における「効率的な顧客対応」の具体的な内容を解答する問題です。
〔コンタクトセンタシステム構築後の運用〕 の下線①において、「効率的に顧客対応を行うために,オペレータをビデオ通話及び電話とは分けて,有人チャット専任の体制とする」と述べられています。
電話やビデオ通話は、一度に一人の顧客としか通話できない(1対1の対応)性質を持っています。
しかし、表3 新たなコンタクトセンタシステムのサービス機能 の「有人チャット」の機能概要を確認すると、「一人のオペレータが複数のチャットを起動し,同時に複数の顧客との対応ができるようにする」と記述されています。
チャットの「会話が途切れて反応がなくなるなどの特殊なコミュニケーション」という特性を活かし、待ち時間を利用して並行処理を行うことができるため、これが効率的な顧客対応の具体的内容となります。
高得点のポイント
- 1人のオペレータが対応主体であること
- 複数の顧客を相手に同時並行で対応できる点に言及していること
本文中の下線②の状況として,カスタマサービスの課題から二つ想定している。一つは,特定のコンタクトセンタへの問合せが急増して,対応しきれなくなりそうな状況である。もう一つ想定している状況を30字以内で述べよ。
模範解答
特定のコンタクトセンタを一時的に閉鎖せざるを得ない状況
採点基準
- 3点: 特定のコンタクトセンタを一時的に閉鎖せざるを得ない状況である旨を明確に記述している。
- 1点: 大規模災害時などには触れているが、「拠点の閉鎖」という具体的な状況が抜けている。
- 0点: 拠点の閉鎖に関する記述がない。
- 2点: 「〜状況」「〜ケース」など、想定状況として自然な文末でまとめられている。
- 0点: 文末表現や構造が不自然である。
解説
本問は、問合せを柔軟に振り分けることが求められる「特定のコンタクトセンタへの問合せ急増」以外の状況を、カスタマサービスの課題から見つける問題です。
〔コンタクトセンタシステム構築後の運用〕 の下線②「状況によっては,問合せを柔軟に振り分けられるようにする」に関連する状況を探します。
一つ目の状況は、問合せの急増によって処理能力を超えそうな状況です。コンタクトセンタ間で業務をカバーし合うための運用であることがわかります。
表2 カスタマサービスの課題 を見ると、コンタクトセンタの管理者の課題(h)に「大規模災害時、感染症の拡大時などには、特定のコンタクトセンタを一時的に閉鎖せざるを得ないケースが想定され、その際にカスタマサービスの継続が危ぶまれる。」という記述があります。
特定のコンタクトセンタが閉鎖された場合、そこに着信させる予定だった問合せを、残りの稼働している拠点へ柔軟に振り分ける必要があります。したがって、もう一つ想定している状況は、特定のコンタクトセンタを一時的に閉鎖せざるを得ない状況です。
高得点のポイント
- 大規模災害等による「特定のコンタクトセンタの一時的な閉鎖」に言及していること
随時FAQの作成・更新を行い,公開できるようにした目的を,カスタマサービスの課題を踏まえて30字以内で述べよ。
模範解答
新商品発売時に,簡単な問合せが急増しないようにするため
採点基準
- 3点: 新商品発売時に簡単な問合せが急増することを防ぐ(抑制する)目的が明記されている。
- 2点: 問合せ急増の防止には触れているが、「新商品発売時」または「簡単な問合せ」のいずれかの限定が欠けている。
- 0点: 問合せ急増防止に関連する記述がない。
- 2点: 目的として「〜ため」「〜ようにすること」等の自然な表現となっている。
- 0点: 目的を示す表現として不自然である。
解説
本問は、随時FAQを作成・更新し公開できるようにした目的を、カスタマサービスの課題を踏まえて解答する問題です。
表2 カスタマサービスの課題 のコンタクトセンタの管理者のヒアリング(g)に、「新商品の発売時は,当該商品のFAQが掲載されていないので,電話及びWebフォームからの問合せが急増する。FAQを見れば分かるような簡単な問合せも多いので,FAQを早く掲載したい。」と記載されています。
従来は四半期に一度しかFAQを掲載していなかったため、毎月数回ある新商品発売時にはFAQが間に合わず、簡単な問合せがコンタクトセンタに殺到していました。
随時FAQを作成・更新し公開できるようにすることで、新商品発売時であっても素早くFAQを提供することができ、顧客は自己解決できるようになります。
したがって目的は、新商品発売時における簡単な問合せの急増を防ぐこと(急増しないようにすること)です。
高得点のポイント
- 新商品発売時という特定のタイミングについて言及していること
- FAQによって「簡単な問合せ」が急増することを防ぐ点に触れていること
設問2(3)は,正答率が低かった。“随時FAQの作成・更新”をできるようにすることでFAQを早く掲載できるようにしたことと,その“FAQを公開”することで簡単な問合せの急増を防ぐ効果を期待したことの両方に気付いてほしかったが,いずれか一方にしか気付いていないと思われる解答が多かった。新しいサービス機能の導入とともに,運用を見直したことによる狙いをしっかり理解してほしい。