令和2年度 宅地建物取引士資格試験 問6
権利関係意思表示・錯誤
AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。
解答・解説
正解: 3. Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作(がんさく)だと思い込み、Bに対し「贋作(がんさく)であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作(がんさく)だと思い込み「贋作(がんさく)なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
正解の根拠
本問は、改正民法における 錯誤による意思表示の取消し(民法第95条) に関する問題です。
正解は 3 です。
意思表示は、以下の錯誤に基づくもので、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして 重要なものであるとき は、原則として取り消すことができます。
ただし、動機の錯誤の場合は、その事情が法律行為の基礎とされていることが 表示されていたとき に限り、取り消すことができます。
また、表意者に 重大な過失 があった場合は原則として取り消すことができませんが、例外として以下のいずれかに該当する場合は取り消しが可能です。
選択肢3では、「贋作であるので」という形で動機が 表示 されており、かつ、相手方Bも同様に贋作だと思い込んでいた(共通錯誤)ため、仮に表意者Aに過失があったとしても、Aは錯誤による取消しを主張することができます。
各選択肢の解説
1. 誤り
Aは「100万円で売却するつもり」で「10万円で売却する」と言っており、表示の錯誤 に該当します。しかし、Aには 重大な過失 があり、相手方Bは「過失なく」信じている(善意無過失)ため、例外事由には当たらず、Aは錯誤による取消しをすることができません。2. 誤り
Aは壺の真の価値について勘違いをしており、動機の錯誤 に該当します。しかし、Aは「手元にお金がないので」と言っただけで、価値に対する錯誤(10万円程度だと思い込んだこと)は法律行為の基礎として相手方に 表示されていません。したがって、錯誤による取消しをすることはできません。3. 正しい
Aは絵画を贋作だと思い込んでおり(動機の錯誤)、Bに対し「贋作であるので」とその事情を 表示 しています。さらに、Bも同様に贋作だと思い込んでおり、共通錯誤(相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合)が成立しています。共通錯誤の場合は取り消しが認められるため、Aは錯誤による取消しをすることができます。4. 誤り
Aの計算間違いにより表示を誤ったケースであり、Aには 重大な過失 があります。相手方BはAの錯誤について「過失なく知らなかった」ため、例外事由である「相手方の悪意・重過失」や「共通錯誤」に該当しません。したがって、Aは錯誤による取消しをすることができません。