平成元年度宅地建物取引主任者資格試験 問4
権利関係売買
土地の売買契約に関する次の記述のうち, 民法の規定によれば, 正しいものはどれか。
解答・解説
正解: 3. その土地に権利を主張する者がいて, 買主が買い受けた土地の所有権の一部を失うおそれがあるときは, 買主は, 売主が相当の担保を提供しない限り, その危険の限度に応じて代金の一部の支払いを拒むことができる。
この問題は、民法における売買契約の効力および売主の担保責任についての理解を問うものです。正解は3です。 抵当権などの担保物権が設定されている物件や他人の権利に属する物件の売買であっても契約自体は有効であり、それぞれの場面で買主がどのような対応(解除・代金支払拒絶・損害賠償など)をとれるかを整理することがポイントです。
正解の根拠
民法576条(権利主張者がいる場合における買主の代金支払拒絶権)により、「売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を提供したときは、この限りでない。」と規定されています。したがって、選択肢3の記述は正しい内容となります。
各選択肢の解説
- 選択肢1(誤り)
他人の所有物を目的とする売買契約(他人物売買)であっても、契約自体は有効に成立します(民法561条)。第三者に譲渡の意思がない場合でも契約が無効になるわけではなく、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負います。 - 選択肢2(誤り)
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合(旧法における瑕疵に相当)、買主は契約の解除等を行うことができますが、その不適合が軽微であるときは解除することができません(民法541条ただし書)。「瑕疵の程度に関係なく」直ちに解除できるとする点は誤りです。 - 選択肢3(正しい)
上記の通り、権利を主張する者がいて買主が所有権の一部を失うおそれがある場合、売主が相当の担保を提供しない限り、買主は危険の限度に応じて代金の一部の支払いを拒むことができます。 - 選択肢4(誤り)
出題当時の民法では、目的物に抵当権が設定されているという事実のみで直ちに契約を解除することはできませんでした。抵当権が実行され、買主が所有権を失った場合等において初めて、契約解除や損害賠償請求が可能とされていました(旧民法567条)。
現行法での扱い(2026年4月1日時点)
出題当時は、抵当権の行使により所有権を失ったときに解除できるとされ、選択肢4は誤りでした。2020年4月1日施行の民法改正で、抵当権の実行を待たずに解除することが可能になりました。しかし、催告の要否や契約の内容によって解除できるかが変わるため、選択肢4は問題文だけでは正誤が決まりません。そのため正解が一つに定まりません。