IPA システム企画・IT投資管理 — 頻出論点と過去問

頻出論点

1. この分野は何か

システムを作り始める前に、何を作るかを段階を追って固め、どの案にお金を掛けるかを比べて決めるための分野です。比べる費用には導入時の支払いだけでなく使い続ける間の支払いも入り、金額にしにくい効果は重みを付けた点数に置き換えられて、案どうしは同じ物差しの上で比べられます。

2. 実際の出題のされ方

開発に先立つ各段階で誰が何を調べ、どの文書を作るかという役割と順序が問われています。構想の立案時にベンダーから集める情報や、業務パッケージを使うときにシステム化計画の段階で行う作業は、ITパスポートで問われました。段階的な導入の最初のフェーズで行う作業や、業務要件定義があいまいなことが原因で起こり得る問題を全て選ぶ問題、開発の前段階で実現性や想定効果を試して確かめる検証の用語を選ぶ問題、RFPについて適切な記述を選ぶ問題も、同じくITパスポートが扱っています。応用情報技術者の午前の問題は、システム管理基準(令和5年)の企画プロセスにおけるビジネス分析の達成目標と、非機能要件の使用性に当たる記述を選ぶものです。

複数の候補案や施策を、表の数値を使って金額や点数で比較する計算問題もよく出題されます。応用情報技術者の午前には、加重総和法で総合評価が最大になるパッケージ製品を選ぶ問題、全て目標どおりだった場合に対する目標達成度を求める問題、テレワーク導入後の数年間の効果の合計を求める問題、業務を見直した後のシナリオごとに年間の効果を比べる問題があります。効果とリスクの総評価点の差から改善案を選ぶ問題と、費用の内訳の表からTCO(総所有費用)が最小の案を選ぶ問題は、どちらもプロジェクトマネージャの午前IIで出題されました。

TCOの説明はITサービスマネージャの午前IIで、TCOが重視されるようになった理由はITパスポートで選ばせています。

IT投資の評価と分類の枠組みを問う問題は、システムアーキテクトとITストラテジストの午前IIに一つずつあります。バランススコアカードの内部ビジネスプロセスの視点に立ったKPIの例と、IT投資ポートフォリオでトランザクションカテゴリに対する投資の直接の目的を選ぶ問題です。

3. 学習のポイント

上流のどの作業も、その作業に要る決定が前の段階で済んでいることを前提にしています。たとえば、画面の細かな配置は、どの業務をシステムにするかが決まってからでなければ決められません。PoCは、本格的に作り始める前に、その考え方が現場で通用するかを小さく試して確かめる取組です。

調達で使う文書は、書く人と受け取る人の組合せがそれぞれ違います。

コストと効果の定量的な比較では、対象となる期間と費用の範囲をそろえて集計します。

  • TCOの比べ方: 一度だけ払う費用と毎年払う費用を分け、毎年の分に使う年数を掛けてから足し合わせます。初期費用が100万円で毎年10万円掛かる案と、初期費用が60万円で毎年20万円掛かる案は、4年使うとどちらも140万円で、5年使うなら前者が10万円安くなります。
  • 施策の効果額: 減る費用と増える利益を足し、新しく掛かる費用を引いて求めます。費用ごとに、一度だけか毎年か、人数に比例するか金額が固定かを確かめてから、年数や人数を掛けます。
  • 重み付けによる定性項目の定量評価: 複数の評価項目に重要度に応じた重みを設定し、各候補の段階評価点と掛け合わせて合計する手法が加重総和法です。評価項目 ii の重みを wiw_i、候補の評価点を sis_i とすると、総合評価点は ∑(wi×si)\sum (w_i \times s_i) で計算します。また、評価点の満点が MM のとき、すべて目標どおり(満点)だった場合の評価点に対する達成度の割合は ∑(wi×si)∑(wi×M)×100\frac{\sum (w_i \times s_i)}{\sum (w_i \times M)} \times 100(%)となります。

IT投資の指標や投資の分類を選ぶときは、その指標や投資が直接に良くするものを一つに絞ってから、当てはまる視点やカテゴリに結びつけます。

4. 間違えやすいところ

システム化構想の立案時にベンダーから収集する情報として、「システム化計画に基づいた開発コストの見積り」を挙げた誤答肢がありました。システム化計画に基づく見積りは、計画ができてからでなければベンダーに頼めません。

業務パッケージを活用したシステム化において、システム化計画プロセスで行う作業として、標準機能だけでは実現できない追加開発の範囲を決定することを挙げた誤答肢がありました。標準機能で足りない部分を決めるには、どのパッケージを使うかが先に決まっている必要があります。

非機能要件の使用性に当たるものを選ぶ問題では、「業務量がピークの日であっても,8時間以内で夜間バッチ処理を完了できること」という誤答肢がありました。一定時間内にバッチ処理を終えられるといった処理能力や処理時間に関する要件は、使用性ではなく性能効率性の要件です。

TCOの説明として、「ハードウェア及びソフトウェアを導入して稼働させるまでの総費用」とする誤答肢がありました。導入して稼働させるまでの費用は初期費用と呼ばれる部分で、TCOのうちの一部にすぎません。

バランススコアカードを用いたIT投資のKPI設定で、内部ビジネスプロセスの視点の例として「顧客クレーム件数を1か月当たり20件以内とする。」を挙げた誤答肢がありました。顧客からのクレーム件数や満足度のように顧客からどう見られているかを測る指標は、社内の業務プロセスの働きそのものを測る指標ではありません。

IT投資ポートフォリオのトランザクションカテゴリの目的として、複数のアプリケーションが共通に使う土台を用意することを挙げた誤答肢がありました。その土台を用意するのは、四つのカテゴリのうちインフラに対する投資です。

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