IPA 戦略分析・競争戦略 — 頻出論点と過去問

頻出論点

1. この分野は何か

企業が自社の置かれた状況を読み、限られた資金と人をどの事業に振り向けるか、他社の工場や技術をどこまで使うかを決める場面では、型の決まった見取り図と物差しが使われます。見取り図の多くは二つか四つ程度の観点に区切った表や図で、物差しの側は、最終的な成果を表す数値と、その成果に先立って動く活動の量を表す数値とが組になっています。

2. 実際の出題のされ方

企業の事例や評価の切り口を示して、当てはまる戦略や分析手法、指標を選ばせる問いが、区分を問わず出ています。ニッチ戦略に当たる企業の事例、四つの評価要素で自社の資源を分析する手法、他社の技術やノウハウを短期間で補う手段を選ぶ問題は、ITパスポートで、用語と中身の対応を確かめる形をとっています。指標の側からは、営業活動の成果と活動量を測る指標の組合せや、戦略目標に対する先行指標、業務プロセスの視点に基づく戦略テーマを選ぶ問題が出ています。応用情報技術者の午前では、アンゾフの成長マトリクスやバリューチェーン、BPOの説明を選ぶ問題が出ています。EMSやファウンドリサービス、ファブレスの特徴を選ぶ問題と、フォロワ戦略に当たるものや、M&Aで買収対象企業を買手が詳しく調べる行為の名前を選ぶ問題もあります。

図表の象限や生産コストの数値から、事業の位置付けや経済効果を読み取らせる問題もあります。PPMの4つの領域のうち、急成長市場で多くの資金投入が必要となるものを選ぶ問題は、ITパスポートで領域の呼び名を答える形でした。応用情報技術者の午前では、資源配分の方針を求める手法の名前、PPMの図の2本の軸の名前、投資用の資金源と位置付けられる事業を選ばせています。アンゾフの成長マトリクスの図から市場浸透戦略の例を選ぶ問題や、2種類の飲料の生産の組合せとコストの表からスケールメリットとシナジー効果の有無を判定する問題、戦略マップの説明を選ぶ問題もありました。

戦略論の背景や、枠組みの中の要素の分類・役割分担を問う問題では、用語の定義の細部まで問われます。ITストラテジストの午前IIには、ダイナミック・ケイパビリティの説明とブルーオーシャン戦略の特徴を選ぶ問題、ODMにおける委託者と受託者の役割分担を選ぶ問題、成長マトリクスで多角化戦略に当てはまる例を選ぶ問題があります。四つの視点の関係を述べた説明文がどの視点のものかを選ぶ問題と、ある視点に分類される業績評価指標を選ぶ問題では、バランススコアカードの視点の中身が問われました。システム監査技術者の午前IIでは、PEST分析で戦略を立てた事例、VRIOフレームワークの評価の視点、ファイブフォース分析の概念図の空欄、バリューチェーンの支援活動に当たるもの、情報システムに対するデューデリジェンスについて適切な記述を選ばせました。

製品開発やIT投資の場面に置いた出題では、競争戦略や外部委託、指標の選び方が題材になっています。エンベデッドシステムスペシャリストの午前IIには、M.E.ポーターの三つの基本戦略に関する記述を選ぶ問題と、組込み機器向けに自社が設計したLSIを、どの種類の事業者に作ってもらうかを選ぶ問題があります。システムアーキテクトの午前IIでは、IT投資の評価指標をバランススコアカードで設定する場面で、社内の業務の流れの視点に当たる指標の例を選ばせました。

3. 学習のポイント

一企業では動かせない外の変化を見る枠組みと、同じ業界で利益を取り合う相手との力関係を見る枠組み、社内の資源の希少さを見る枠組みは、それぞれ別のものです。

事業の成長の方向を考える図と、事業への資金の配り方を考える図は、どちらも二つの物差しを掛け合わせて四つの区画を作ります。掛け合わせる物差しの組は、二つの図で重なりません。

  • スケールメリットとシナジー効果の計算: 表のコストから両者を判定するときは、比較する組合せを分けて計算します。スケールメリット(規模の経済)は、単一の製品の生産量を増やしたときに1単位当たりの平均コストが下がるかで判定します。例えば単一製品を5万個作ると400万円(1万個当たり80万円)、15万個作ると900万円(1万個当たり60万円)ならスケールメリットがあります。シナジー効果(範囲の経済)は、製品Xと製品Yを別々に作ったときのコストの合計より、両方まとめて作ったときのコストの方が小さいかで判定します。

バランススコアカードでは、指標を置く視点が、その数値が誰の何の状態を表すかによって割り当てられます。同じ目標に対して、結果が出てから分かる数値と、本人が先に増やせる活動の数値を組で置くのも指標づくりの基本で、たとえば資格試験の合格を目標にするなら、合否は前者、毎週の演習量は後者です。

設計・製造・販売のどれを自社で持ち、どれを他社に任せるかは、工場や設備を抱える負担と、企画やブランドを手元に残す利点との兼ね合いで選ばれます。委託の形の呼び名は、受託する側がどこまでの工程を引き受けるかを表しています。

4. 間違えやすいところ

ポーターの三つの基本戦略に関する記述を選ぶ問題では、差別化戦略を、規模の経済や経験曲線によって他社より低い原価を達成する戦い方とした誤答肢がありました。原価の低さで優位に立つのはコストリーダーシップ戦略の特徴であり、独自の価値で勝負する差別化戦略とは狙いが別です。

フォロワ戦略の説明を選ぶ問題では、上位企業のシェアを奪うために製品や販売促進など多方面で差別化を仕掛けるとする誤答肢がありました。上位の企業と正面から競ってシェアを奪いにいく戦い方は、チャレンジャー戦略に当たります。

資材を受け入れて保管する購買物流を、バリューチェーンの支援活動とした誤答肢がありました。購買物流は、製品が顧客に届くまでの流れの入口に当たり、価値を直接生む主活動の側に入ります。

1人または少数の作業者が全工程を受け持って多品種少量生産に対応する方式を、ファブレスの特徴とした誤答肢がありました。作業者が一人で組み立てまでを担い品目の切り替えを容易にするやり方は、製造現場におけるセル生産方式の特徴です。

BPOの説明として、災害などの被災時に重要事業の中断を防ぎ、早期に復旧させる体制を整えることを挙げた誤答肢がありました。緊急時にも事業を止めないための備えはBCM(事業継続マネジメント)やBCP(事業継続計画)が扱う内容です。

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