IPA 経営戦略 — 頻出論点と過去問

この分野の学び方

1. この分野の全体像

経営戦略は、企業が環境を読んで市場と資源の振り向け先を決め、開発から生産・販売までの業務をどう組み立てるかを定める考え方と手法です。理論の背景や参照モデルの細部まで問うのは高度試験の午前IIで、ITパスポートと応用情報技術者の午前の問題は、フレームワークや手法の定義と基本の計算を確かめるものです。自社の立ち位置と戦い方を定める全社・事業の枠組みから、市場での価値の届け方と顧客との関係づくり、技術開発や製造・在庫の最適化、デジタル技術を使った収益の仕組みの設計までが、一つの流れの上に並んでいます。

2. 配下の論点の案内

  • 戦略分析・競争戦略
    市場や競合の状況および自社の経営資源を評価して事業の方向性を決める枠組みであり、以降のマーケティングや技術開発、外部委託の判断の土台となります。ITパスポートや応用情報技術者の午前では、PPMやバランススコアカードの視点の分け方、KPIの決め方、製造を外に任せる形態の違いを選ぶ問題が出ています。

  • マーケティング戦略・市場分析
    競争戦略で定めた事業の方向性を受けて、標的とする市場の細分化や価格・製品・流通の設計、消費者行動や市場の調査手法を扱います。応用情報技術者の午前とITストラテジストの午前IIでは、4Pと4Cの対応や価格設定の手法、需要の価格弾力性、購買行動類型や調査手法の特徴を問う問題が出題されています。

  • 顧客関係・プロモーション
    市場分析で設定した標的顧客に対し、認知から購買・定着までの関係を築く情報システムと販売促進・Web広告の手法、および顧客価値や広告効果の指標が加わります。ITパスポートでCRMやSFA、MAの役割の識別が問われ、応用情報技術者の午前では広告費と売上から広告の効果を示す比率を求める計算が出ています。

  • 技術経営・イノベーション
    研究開発の成果を製品化して市場に普及させるまでの障壁と、社外の知見や資金を取り込みながら新規事業を立ち上げる手法を扱います。ITパスポートと応用情報技術者の午前では、新しい製品が広まる過程の断絶や、試作を小さく回して事業を確かめる進め方、事業化から産業化へ移る段階の障壁の名前を選ぶ問題があり、知財情報を経営判断に組み込む手法も問われています。

  • 生産方式・サプライチェーン
    開発された製品を効率よく設計・製造し、企業間を含めた調達から販売までのモノと情報の流れを最適化する生産方式と管理システムを学びます。応用情報技術者の午前とITストラテジストの午前IIでは、JITやTOCの特徴、PLMやSCMの目的、工場のシステム階層におけるMESの位置付けやSCORのプロセス区分を選ぶ問題があります。

  • 業務分析・OR
    生産計画や在庫管理、投資や競争の意思決定を数理モデルや図表で解く手法を扱い、生産方式の概念を具体的な発注量や生産量の数値に落とし込む役割を持ちます。応用情報技術者の午前やITストラテジストの午前IIでは、定量・定期発注方式や部品表からの正味所要量の計算、線形計画法、ゲーム理論のナッシュ均衡やマクシミン原理の判定が出題されています。

  • デジタルビジネス・ビジネスモデル
    ITやデータを活用して価値を生み出し収益を得る仕組みの型と、業界構造や社会の変革を表す概念が含まれます。ITパスポートと応用情報技術者の午前では、フリーミアムやAPIエコノミーなどの用語の識別に加え、ビジネスモデルキャンバスの各ブロックへ事業の要素を当てはめる問題まであります。

  • 経営理念・組織・ガバナンス
    すべての戦略の上位にある企業の存在意義と、戦略を実行する組織形態、知識創造のプロセス、および企業活動を監督する統治の枠組みがここに入ります。ITパスポートでミッション・ビジョン・バリューや組織形態、コーポレートガバナンスの施策が問われ、ITストラテジストの午前IIではSECIモデルの知識変換のプロセスを選ばせています。

3. 学習の順序の提案

「経営理念・組織・ガバナンス」の理念と統治の枠組み、「戦略分析・競争戦略」の環境分析と事業の方向づけは、ほかの論点の施策が向かう先を決めています。全社・事業の方向性が決まったあとの「マーケティング戦略・市場分析」と「顧客関係・プロモーション」は、標的市場の選定から販促の施策と効果の測定までの一続きの段階です。また、新たな価値を生み出す「技術経営・イノベーション」や「デジタルビジネス・ビジネスモデル」は競争戦略の具体化として位置付けられ、「業務分析・OR」の正味所要量や発注量の計算は、「生産方式・サプライチェーン」で決めた在庫の考え方を数値に直したものです。

受ける区分 先に学ぶ論点 次に学ぶ論点
ITパスポート デジタルビジネス・ビジネスモデル、技術経営・イノベーション 戦略分析・競争戦略、経営理念・組織・ガバナンス、生産方式・サプライチェーン
応用情報技術者(午前)・高度試験の午前I 戦略分析・競争戦略、デジタルビジネス・ビジネスモデル 業務分析・OR、技術経営・イノベーション、顧客関係・プロモーション
ITストラテジスト(午前II) マーケティング戦略・市場分析、戦略分析・競争戦略、顧客関係・プロモーション 生産方式・サプライチェーン、デジタルビジネス・ビジネスモデル、技術経営・イノベーション
システム監査技術者・エンベデッドシステムスペシャリスト・システムアーキテクト(午前II) 戦略分析・競争戦略 生産方式・サプライチェーン(エンベデッドシステムスペシャリスト)、デジタルビジネス・ビジネスモデル(システムアーキテクト)、マーケティング戦略・市場分析(システム監査技術者)

午後の問題では、応用情報技術者で、環境分析とクロスSWOT分析からの成長戦略、コアコンピタンスと企業ドメインに基づくブランド戦略、バランススコアカードによる戦略の策定、ゲーム理論を使った事業戦略の判断が、それぞれ別の大問で扱われました。ITストラテジストの午後I・午後IIでは、業務提携やAPIによる連携、プラットフォームの構築を組み込んだ新しいビジネスモデルやDXの企画が問われ、業務プロセスや情報システムへの落とし込みまでが答える範囲に入ります。エンベデッドシステムスペシャリストの午後IIでも、組込み製品の企画段階での脅威の分析、市場の細分化と標的の選定、生産形態の選択が論述の題材になっています。

4. 分野をまたいで間違えやすいところ

「技術経営・イノベーション」のイノベータ理論やキャズムと、「マーケティング戦略・市場分析」のプロダクトライフサイクルは、どちらも新製品が広まる時間の流れを描きますが、前者は買い手をどの順に取り込むかという顧客の層の並びで、後者は市場全体の売上と利益が段階ごとにどう動くかという製品の側の見方です。

「デジタルビジネス・ビジネスモデル」とシステム戦略・企画の分野は、同じデジタル技術を題材にしても、収益を生む事業の型を問うのはこの分野で、その事業を支える情報システムの位置づけや方針を問うのはシステム戦略・企画の分野です。SoEの説明を選ぶ問題は、この分野にもシステム戦略・企画の分野にも属します。

利益の数字を扱う問題でも、「業務分析・OR」は相手の出方や将来の状況が分からない中でどの案を選ぶかの決め方を、会計・財務の分野は費用と収益の構造から損益分岐点や投資の回収を測る計算を問います。

人を動かすリーダーシップや動機付けの理論は、「経営理念・組織・ガバナンス」の組織の形や統治の仕組みと同じく組織を扱いますが、会社の構造ではなく個人やチームへの働きかけを問うもので、働く人の性質についての仮定を二つに分けた理論の問題は、この分野にもステークホルダー・要員の分野にも属します。

経営戦略の論点別の過去問

戦略分析・競争戦略63問 マーケティング戦略・市場分析29問 顧客関係・プロモーション23問 技術経営・イノベーション33問 生産方式・サプライチェーン21問 業務分析・OR22問 デジタルビジネス・ビジネスモデル42問 経営理念・組織・ガバナンス18問

経営戦略の理解度チェック

経営戦略の過去問一覧

この分野の午後問題(記述式・読み物)

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