IPA 会計・財務 — 頻出論点と過去問
この分野の学び方
1. この分野の全体像
会計・財務は、企業の決算書に表れる収益や資産の集計と、将来の利益計画や投資の採算計算を一本でつなぐ知識です。段階利益や単年度の財務指標の計算と資金調達の用語で足りるITパスポートの問題に比べて、応用情報技術者の午前とITストラテジストの午前IIの問題は、複数時点の損益からの逆算やキャッシュフローの割引、連結決算や減損の処理まで前提の条件が込み入っています。決算で確定する利益や現金の流れは、固定費・変動費に分解して販売目標を立てる計算や、複数年にわたるシステム投資の回収を評価する計算の基礎になります。
2. 配下の論点の案内
損益分岐点・原価計算
費用を変動費と固定費、または直接費と間接費に分けて、目標利益の達成に必要な売上高や製品の原価を求めます。損益分岐点や必要販売量を求める計算を土台に、応用情報技術者やITストラテジストの午前IIでは2時点の損益からの変動費の逆算や、活動ごとに間接費を割り振って改善の効果を見積もる計算が出題されています。財務諸表・経営分析
損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の構造と会計処理、およびそれらから算出する経営指標を扱う論点で、ほかの論点で使われる利益・減価償却費・キャッシュフローの定義の土台になります。ITパスポートでは段階利益や自己資本比率の計算と売掛金・棚卸資産の計上が出題され、ITストラテジストの午前IIでは間接法による営業活動のキャッシュフローの計算や連結の売上高総利益率に加え、固定資産の価値の下落を帳簿に映す会計手続の名前を選ぶ問題があります。投資評価
初期投資の支出と、将来にわたって生じるキャッシュインや費用削減の効果を並べて、投資案の採算性を比べます。応用情報技術者の午前では回収期間法や正味現在価値法による複数シナリオの比較が出題され、ITストラテジストの午前IIでは年度ごとの割引計算や、経済的付加価値の算出の仕方まで問われています。
3. 学習の順序の提案
段階利益と減価償却・キャッシュフローの考え方は「財務諸表・経営分析」で身につくもので、「損益分岐点・原価計算」で目標とする利益の置き方と、「投資評価」で会計上の利益と現金の出入りを分けて回収期間や現在価値を出す計算の両方に生かされます。
| 受ける区分 | 先に学ぶ論点 | 次に学ぶ論点 |
|---|---|---|
| ITパスポート | 財務諸表・経営分析(段階利益・財務指標・売掛金や棚卸資産の計算) | 損益分岐点・原価計算、投資評価(単価変更時の必要販売量、投資の回収期間や方式間の採算比較)、および資金調達の用語 |
| 応用情報技術者 / 高度試験の午前I | 損益分岐点・原価計算(変動費率の逆算・制約条件下の利益最大化・活動基準原価計算) | 財務諸表・経営分析(2社の財務指標比較・固定資産の除却損)、投資評価(回収期間法・正味現在価値法によるシナリオ比較) |
| 高度試験の午前II | 区分に応じた重点論点(ITストラテジストは財務諸表・経営分析のキャッシュフロー計算書や連結決算と投資評価の割引計算、プロジェクトマネージャは投資評価の期待金額価値、システムアーキテクトは損益分岐点・原価計算の活動基準原価計算) | ITストラテジストは損益分岐点・原価計算(活動基準原価計算)、システム監査技術者は財務諸表・経営分析(損益計算資料からの営業利益) |
午後では、応用情報技術者で経営戦略や新規事業開発の大問の中に財務状況の評価や、固定費の割合が営業利益に与える影響を問う設問があり、ITサービスマネージャでクラウドの利用料の予算と費用の実績の管理、システム監査技術者でIT投資計画の投資額の算定と投資評価を確かめる監査手続が題材になりました。
4. 分野をまたいで間違えやすいところ
損益計算書の段階利益の計算と、変動費・固定費による利益計画の混同
決算資料から売上総利益や営業利益を求める計算は「財務諸表・経営分析」で扱いますが、問題文に売上総利益や営業利益という言葉が出てきても、費用を固定費と変動費に分けて目標の利益に要る売上高や販売数量を逆に求める計算は「損益分岐点・原価計算」の枠組みです。論点を分けるのは利益の名前ではなく、費用を発生の仕方で分けて計算するかどうかです。
減価償却費の扱いにおける、会計上の損益計算と投資のキャッシュフロー評価の混同
減価償却費は、損益の計算では期間ごとの費用として利益を減らしますが、現金の出入りを見る計算では、お金が出ていかない費用です。「投資評価」で回収期間や現在価値を現金の流れから求める問題と、「財務諸表・経営分析」で損益を求める問題とでは、同じ減価償却費の数字が表に載っていても、その数字の役割が違います。
投資評価の採算指標と、システム戦略・企画の案の比べ方との境界
IT投資を題材にした問題でも、回収期間や正味現在価値、期待金額価値の式で有利な案を選ぶ問題は「投資評価」で扱い、定性的な評価項目に重みを付けて点数にする比べ方や、投資を種類ごとに振り分ける考え方は、システム戦略・企画の分野で問われます。
利益の予想表から戦略を選ぶ問題と、経営戦略の意思決定の手法との境界
投資戦略ごとの利益の予想表が与えられていても、割引や確率の重み付けを使わずに、最悪の場合の利益を比べて戦略を決める問題は、この分野と経営戦略の分野の両方に入っており、解き方は経営戦略の側のゲーム理論の考え方です。
会計・財務の理解度チェック
会計・財務の過去問一覧
- 2026年度(R8) ITパスポート 問3 投資会社であるA社が,それぞれの投資戦略を採る場合の利益は,表のように予想される。A社がマクシミン戦略を採り,かつ,市況…
- 2026年度(R8) ITパスポート 問9 製品の製造に関連して発生する次の費用のうち,間接費だけを全て挙げたものはどれか。 a 完成した製品を検査する労務費 b …
- 2026年度(R8) ITパスポート 問26 表はA社の貸借対照表である。A社の自己資本比率は何%か。…
- 2025(R7)秋 応用情報技術者 午前 問64 投資の意思決定手法の一つであるPBP法に関する記述として,適切なものはどれか。…
- 2025(R7)秋 応用情報技術者 午前 問76 A社の貸借対照表の構成は図のとおりであった。A社の自己資本比率は何%か。…
- 2025(R7)秋 応用情報技術者 午前 問77 表のような製品A, Bを製造, 販売する場合, 考えられる利益は最大で何円になるか。ここで, 機械の年間使用可能時間は延…
- 2025(R7)秋 高度試験共通 午前I 問25 投資の意思決定手法の一つであるPBP法に関する記述として,適切なものはどれか。…
- 2025(R7)秋 高度試験共通 午前I 問29 表のような製品A,Bを製造,販売する場合,考えられる利益は最大で何円になるか。ここで,機械の年間使用可能時間は延べ15,…
- 2025(R7)春 応用情報技術者 午前 問64 製品Xと製品Yを販売している企業が,見積作成と提案書作成に掛かる業務時間を,それぞれ 20%削減できるシステムの構築を検…
- 2025(R7)春 応用情報技術者 午前 問76 表から,卸売業A社と小売業B社の財務指標を比較したとき,卸売業A社について適切な記述はどれか。…
- 2025(R7)春 応用情報技術者 午前 問77 売上高が7,000万円のとき,200万円の損失,売上高が9,000万円のとき,600万円の利益と予想された。売上高が8,…
- 2025(R7)春 高度試験共通 午前I 問29 売上高が7,000万円のとき,200万円の損失,売上高が9,000万円のとき,600万円の利益と予想された。売上高が8,…
- 2025(R7)春 ITストラテジスト 午前II 問4 プロジェクト開始時点で150百万円の支出を行うIT投資プロジェクトにおいて,3年間の金銭的価値をDCF法で算定した場合,…
- 2025(R7)春 ITストラテジスト 午前II 問19 キャッシュフロー計算書において,投資活動によるキャッシュフローに該当するものはどれか。…
- 2025(R7)春 ITストラテジスト 午前II 問20 債務超過の状態を表しているものはどれか。…
- 2025(R7)春 ITストラテジスト 午前II 問21 当期末の決算において,表に示した損益計算資料が得られた。日本基準で当期の営業利益は何百万円か。…
- 2025年度(R7) ITパスポート 問5 A社ではB商品の仕入れと販売を行っている。ある期のB商品の仕入単価は期首から上昇し続け,期末が最も高くなった。当該期の売…
- 2025年度(R7) ITパスポート 問26 4月1日から5月31日までに,取引①から取引⑤があった。各取引の受注,売上計上,現金回収の状況が表のとおりであるとき,こ…
- 2025年度(R7) ITパスポート 問34 ある商品を5,000個販売したところ, 売上げが6,000万円, 利益が400万円となった。商品1個当たりの変動費が7,…
- 2024(R6)秋 応用情報技術者 午前 問77 A社とB社の比較表から分かる,A社の特徴はどれか。…
- 2024(R6)春 応用情報技術者 午前 問64 IT投資案件において,投資効果をPBP(Pay Back Period)で評価する。投資額が500のとき,期待できるキャ…
- 2024(R6)春 応用情報技術者 午前 問76 今年度のA社の販売実績と費用(固定費,変動費)を表に示す。来年度,固定費が5%増加し,販売単価が5%低下すると予測される…
- 2024(R6)春 応用情報技術者 午前 問77 損益計算資料から求められる損益分岐点売上高は,何百万円か。…
- 2024(R6)春 高度試験共通 午前I 問29 損益計算資料から求められる損益分岐点売上高は,何百万円か。…
- 2024(R6)春 ITストラテジスト 午前II 問20 キャッシュフロー計算書における,営業活動によるキャッシュフローは何万円か。…
- 2024(R6)春 ITストラテジスト 午前II 問21 EVA(経済的付加価値)の算出方法を説明したものはどれか。…
- 2024年度(R6) ITパスポート 問8 表は A 社の期末の損益計算書から抜粋した資料である。当期純利益が800百万円であるとき,販売費及び一般管理費は何百万円…
- 2024年度(R6) ITパスポート 問20 A社では,1千万円を投資して営業支援システムを再構築することを検討している。現状の営業支援システムの運用費が5百万円/年…
- 2024年度(R6) ITパスポート 問30 上司から自社の当期の損益計算書を渡され,“我が社の収益性分析をしなさい”と言われた。経営に関する指標のうち,この損益計算…
- 2023(R5)秋 応用情報技術者 午前 問64 IT投資効果の評価方法において,キャッシュフローベースで初年度の投資によるキャッシュアウトを何年後に回収できるかという指…
- 2023(R5)秋 応用情報技術者 午前 問77 取得原価 30万円の PC を 2年間使用した後,廃棄処分し,廃棄費用 2万円を現金で支払った。このときの固定資産の除却…
- 2023(R5)春 応用情報技術者 午前 問76 原価計算基準に従い製造原価の経費に算入する費用はどれか。…
- 2023(R5)春 応用情報技術者 午前 問77 会社の固定費が 150 百万円,変動費率が 60% のとき,利益 50 百万円が得られる売上高は何百万円か。…
- 2023(R5)春 高度試験共通 午前I 問29 原価計算基準に従い製造原価の経費に算入する費用はどれか。…
- 2023(R5)春 システムアーキテクト 午前II 問13 製品Xと製品Yを販売している企業が,見積作成と提案書作成に掛かる業務時間を,それぞれ 20%削減できるシステムの構築を検…
- 2023(R5)春 ITストラテジスト 午前II 問4 スマートフォン向けのアプリケーションプログラムの開発プロジェクト a〜dにおいて,2年間の投資効果を NPVで評価する場…
- 2023(R5)春 ITストラテジスト 午前II 問19 活動基準原価計算 (Activity-Based Costing) を導入して実現できることはどれか。…
- 2023(R5)春 ITストラテジスト 午前II 問20 表の事業計画案に対して,新規設備投資に伴う減価償却費(固定費)の増加 1,000 万円を織り込み,かつ,売上総利益を 3…
- 2023(R5)春 ITストラテジスト 午前II 問21 連結売上高総利益率は何%か。ここで,B社はA社の100%子会社で,仕入れは全て親会社からであり,売上は全て親会社以外であ…
- 2023年度(R5) ITパスポート 問4 ASP利用方式と自社開発の自社センター利用方式(以下“自社方式”という)の採算性を比較する。次の条件のとき,ASP利用方…
- 2023年度(R5) ITパスポート 問13 ある製品の今月の売上高と費用は表のとおりであった。販売単価を1,000円から800円に変更するとき,赤字にならないために…
- 2023年度(R5) ITパスポート 問20 資本活用の効率性を示す指標はどれか。…
- 2023年度(R5) ITパスポート 問28 AIを開発するベンチャー企業のA社が,資金調達を目的に,金融商品取引所に初めて上場することになった。このように,企業の未…
- 2022(R4)秋 応用情報技術者 午前 問64 投資効果を正味現在価値法で評価するとき,最も投資効果が大きい(又は最も損失が小さい)シナリオはどれか。ここで,期間は3年…
- 2022(R4)秋 高度試験共通 午前I 問24 投資効果を正味現在価値法で評価するとき,最も投資効果が大きい(又は最も損失が小さい)シナリオはどれか。ここで,期間は3年…
- 2022(R4)秋 プロジェクトマネージャ 午前II 問12 工場の生産能力を増強する方法として,新規システムを開発する案と既存システムを改修する案とを検討している。次の条件で,期待…
- 2022(R4)春 応用情報技術者 午前 問64 IT投資効果の評価方法において,キャッシュフローベースで初年度の投資によるキャッシュアウトを何年後に回収できるかという指…
- 2022(R4)春 応用情報技術者 午前 問71 XBRLで主要な取扱いの対象とされている情報はどれか。…
- 2022(R4)春 応用情報技術者 午前 問76 新製品の設定価格とその価格での予測需要との関係を表にした。最大利益が見込める新製品の設定価格はどれか。ここで,いずれの場…
- 2022(R4)春 高度試験共通 午前I 問24 IT投資効果の評価方法において,キャッシュフローベースで初年度の投資によるキャッシュアウトを何年後に回収できるかという指…
- 2022(R4)春 高度試験共通 午前I 問28 XBRLで主要な取扱いの対象とされている情報はどれか。…
- 2022(R4)春 ITストラテジスト 午前II 問4 プロジェクト開始時点で150百万円の支出を行うIT投資プロジェクトにおいて,3年間の金銭的価値をDCF法で算定した場合,…
- 2022(R4)春 ITストラテジスト 午前II 問20 キャッシュフロー計算書における,営業活動によるキャッシュフローは何万円か。…
- 2022(R4)春 ITストラテジスト 午前II 問21 固定資産について回収可能価額と帳簿価額とを比較し,回収可能価額が帳簿価額を下回る場合,その差額を損失として認識し,当該資…
- 2022年度(R4) ITパスポート 問11 与信限度額が3,000万円に設定されている取引先の5月31日業務終了時までの全取引が表のとおりであるとき,その時点での取…
- 2022年度(R4) ITパスポート 問12 クラウドファンディングは,資金提供の形態や対価の受領の仕方の違いによって,貸付型,寄付型,購入型,投資型などの種類に分け…
- 2022年度(R4) ITパスポート 問28 A社のある期の資産,負債及び純資産が次のとおりであるとき,経営の安全性指標の一つで,短期の支払能力を示す流動比率は何%か…
- 2022年度(R4) ITパスポート 問30 営業利益を求める計算式はどれか。…
- 2021(R3)秋 応用情報技術者 午前 問77 A社とB社の比較表から分かる,A社の特徴はどれか。…
- 2021(R3)秋 システム監査技術者 午前II 問16 当期末の決算において,表に示した損益計算資料が得られた。当期の営業利益は何百万円か。…
- 2021(R3)春 応用情報技術者 午前 問77 キャッシュフロー計算書において,営業活動によるキャッシュフローに該当するものはどれか。…
- 2021(R3)春 ITストラテジスト 午前II 問2 情報システムの導入と活用によって生み出されるキャッシュフローの現在価値を計算することによって,投資効果を評価したい。この…
- 2021年度(R3) ITパスポート 問28 次の当期末損益計算資料から求められる経常利益は何百万円か。…
- 2021年度(R3) ITパスポート 問29 粗利益を求める計算式はどれか。…
この分野の午後問題(記述式・読み物)
- 2025(R7)秋 システム監査技術者 午後I 問3 問3 IT投資計画の監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。…
- 2024(R6)春 ITサービスマネージャ 午後I 問1 問1 サービスの予算業務及び会計業務に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。…
- 2023(R5)秋 応用情報技術者 午後 問2 バランススコアカードを用いたビジネス戦略策定に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。…
- 2022(R4)秋 応用情報技術者 午後 問2 問2 教育サービス業の新規事業開発に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。…
- 2022(R4)春 応用情報技術者 午後 問2 問2 化粧品製造販売会社でのゲーム理論を用いた事業戦略の検討に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。…