「売買」の過去問(権利関係・28問)

1. この分野は何か

不動産などの物を売り買いする契約が「売買」です。本分野では、引き渡された家が雨漏りしていたり、面積が足りなかったりといった「契約内容に適合しない」トラブルが発生した場合に、売主がどのような責任を負うのか(契約不適合責任)について学びます。

2. 学習のポイント

2020年の民法改正で「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」という名称に変わり、ルールも大きく変わりました。引き渡された目的物が「種類、品質または数量に関して契約の内容と適合しない」場合、買主は以下の4つの権利を行使できます。

  1. 追完請求(ついかんせいきゅう):目的物を修理してくれ(修補)、代わりのまともな物をくれ(代替物引渡し)と要求する権利。
  2. 代金減額請求:修理などを要求(催告)したのに売主が直してくれない場合に、その分だけ代金を安くしてくれと要求する権利。
  3. 契約の解除:契約自体をなかったことにする権利。改正後は債務不履行の一般ルールによるため、原則として追完の催告をしたうえで、不履行が「軽微」でなければ解除できます(催告解除)。契約の目的を達せられないような重大な不適合であれば、催告なしで直ちに解除できます(無催告解除)。「目的達成不能でなければ解除できない」という旧法の整理のままにしないよう注意してください(民法564条・541条・542条)。
  4. 損害賠償請求:不適合によって生じた損害の賠償を求める権利。売主に帰責事由(債務者の責めに帰すべき事由。おおむね故意・過失にあたるもの)がない場合は請求できません(民法415条1項ただし書・564条)。

3. 実際の出題のされ方

売買(契約不適合責任)は頻出の重要テーマです。「期間制限」のルールが非常によく狙われます。

買主がこれらの権利を行使するためには、原則として「不適合を知った時から1年以内に売主に通知」しなければなりません。ただし、この「1年以内の通知」が必要なのは「種類・品質」の不適合(例:雨漏り、シロアリなど)の場合のみです。「数量・権利」の不適合(例:面積が足りない、他人の土地が混ざっていた)の場合は、1年以内の通知は不要で、通常の消滅時効(知ってから5年など)にかかるまで権利を行使できます。

4. 間違えやすいところ

代金減額請求の手順
買主はいきなり「代金を安くしろ」と請求することはできません。原則として、まずは「追完請求(直してくれ)」をして、相当の期間を定めても直してくれない場合に、初めて代金減額請求をすることができます。

売主が悪意だった場合の期間制限の例外
引渡しの時点で、売主自身が「実はこの家、雨漏りするんだよな」と知っていた(悪意)または重大な過失によって知らなかった場合、買主を保護するため「知ってから1年以内の通知」という期間制限のルールは適用されなくなります(買主は1年を過ぎてから通知しても権利を行使できます)。

宅建業法との違い
民法の契約不適合責任は、当事者間で「特約(売主は一切責任を負わない等)」を結べば、その特約は有効となります。ただし、売主が不適合を知りながら買主に告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません(民法572条)。

さらに、売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合には、宅建業法の「自ら売主の8種制限」が適用されます(買主が消費者かどうかではなく、宅建業者かどうかで決まります)。この場合、民法の原則より買主に不利な特約は無効ですが、「不適合を通知すべき期間を引渡しの日から2年以上とする特約」だけは例外的に有効です(宅建業法40条・78条2項)。業法と民法のミックス問題で出題されます。

  1. 2025年度(R7) 問10 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約による甲土地の引渡し後に、目的物の品質に関して契約の内容に適合しない土壌汚染が見…
  2. 2024年度(R6) 問10 売買契約の目的物が品質に関して契約の内容に適合しない場合において、当該契約不適合が売主及び買主のいずれの責めにも帰するこ…
  3. 2021(R3)12月 問4 いずれも宅地建物取引業者ではない売主Aと買主Bとの間で令和3年7月1日に締結した売買契約に関する次の記述のうち、民法の規…
  4. 2021(R3)10月 問7 Aを売主、Bを買主として、A所有の甲自動車を50万円で売却する契約(以下この問において「本件契約」という。)が令和3年7…
  5. 2020(R2)12月 問7 Aを売主、Bを買主として、令和2年7月1日に甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合に…
  6. 2020(R2)10月 問9 Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、①Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した場合と、②Aを贈与者、Bを受贈者…
  7. 2019年度(R1) 問3 事業者ではないAが所有し居住している建物につきAB間で売買契約を締結するに当たり、Aは建物引渡しから3か月に限り瑕疵担保…
  8. 2017年度(H29) 問5 Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは…
  9. 2016年度(H28) 問6 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合の売主の担保責任に関す…
  10. 2009年度(H21) 問10 Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはど…
  11. 2008年度(H20) 問9 宅地建物取引業者であるAが、自らが所有している甲土地を宅地建物取引業者でないBに売却した場合のAの責任に関する次の記述の…
  12. 2007年度(H19) 問11 宅地建物取引業者でも事業者でもないAB間の不動産売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に…
  13. 2005年度(H17) 問9 売買契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
  14. 2004年度(H16) 問10 宅地建物取引業者ではないAB間の売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 誤っ…
  15. 2003年度(H15) 問10 Aが, BからB所有の土地付中古建物を買い受けて引渡しを受けたが, 建物の主要な構造部分に欠陥があった。この場合, 民法…
  16. 2002年度(H14) 問9 Aが, Bに建物を売却し, 代金受領と引換えに建物を引き渡した後に, Bがこの建物に隠れた瑕疵があることを発見したが, …
  17. 2000年度(H12) 問7 買主Aと売主Bとの間で建物の売買契約を締結し, AはBに手付を交付したが, その手付は解約手付である旨約定した。この場合…
  18. 1999年度(H11) 問10 AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合(売主の担保責任についての特約はない。)に関する次の記述のうち, 民法の規定…
  19. 1996年度(H8) 問8 AがBから建物所有の目的で土地を買い受ける契約をしたが, AB間に担保責任に関する特約はなかった。この場合, 民法の規定…
  20. 1994年度(H6) 問6 Aは, Bから土地建物を購入する契約(代金5,000万円, 手付300万円, 違約金1,000万円)を, Bと締結し, …
  21. 1993年度(H5) 問 8 Aが1,000 \mathrm{m}^2の土地について数量を指示してBに売却する契約をBと締結した場合の、売主Aの担保責…
  22. 1992年度(H4) 問5 Aは,B所有の土地建物をBから買い受け,その際「Bは瑕疵担保責任を負わない」旨の特約を結んだが,その土地建物に隠れた瑕疵…
  23. 1992年度(H4) 問7 不動産の売買契約における手付に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 正しいものはどれか。…
  24. 1991年度(H3) 問8 不動産の買戻しに関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 誤っているものはどれか。…
  25. 1991年度(H3) 問11 AがBからBの所有地を買い受ける契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、Aがその善意悪意に関係なく…
  26. 1989年度(H1) 問4 土地の売買契約に関する次の記述のうち, 民法の規定によれば, 正しいものはどれか。…
  27. 1988年度(S63) 問6 買主Aは, 売主Bと土地の売買契約を締結し, 手付を交付したが, 手付について, AB間で別段の定めをしていない。この場…
  28. 1988年度(S63) 問10 土地及び建物について, Aを売主, Bを買主とする売買契約が成立した。 この場合, 民法の規定によれば, 次の記述のうち…